ブックタイトルTEXT形成外科学 改訂3版

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概要

TEXT形成外科学 改訂3版

52総論Ⅱ 治療手技 形成外科の手術手技は,組織を愛護的に扱い,自然治癒力を生かしながら迅速できれいな創治癒を得ることを念頭におく,外科系の基本となる手技である.外科系以外に進む医師にとっても,組織を扱う基本的な考え方と手技として,すべての医師が概念を理解し習得すべきものである.atraumatic technique の考え方 形成外科における主たる課題の一つに,迅速かつきれいに傷を治すというものがある.これにはatraumatic technique が重要な要素となる.当然のことながら,手術を行う場合,皮膚にまったく損傷を加えることなく手術目的を果たすことはできない.ここで言う「atraumatictechnique」とは,「組織損傷を最小限に抑える手術手技」を指す.具体的には,皮膚切開,止血,?離,皮膚縫合という一連の手技の中で,組織を愛護的に扱い,その損傷を避けるように手術器具を操作することである.時間をかけて丁寧に行えばよいわけではなく,手術時間の延長は,組織の乾燥などの非生理的状態が長引くことによる組織損傷や術後感染の危険性を増加させるので,計画的に順序よく短時間で手術を終えるための配慮も「atraumatic technique」の一つと考えることができる.形成外科の基本手術器具 形成外科手術の切開・?離・止血・縫合に用いる手術器具は,メス,モノポーラ電気メス,バイポーラ止血鑷子,鑷子,持針器,剪刀などである(図1~5).形成外科手術で皮膚切開に通常使われるのは15 番メスで,ついで11 番メスが使われる.11 番は先が尖ったメスで,唇裂手術などで小さな皮弁を正確に深部まで一気に切開するときに用いられる.15 番メスは,ペンホルダーに準じた持ち方で使用する場合が多い.モノポーラ電気メスは脂肪層以深の切開と止血目的に用いられる.形成外科では,出血点を安全にピンポイントで止血する目的でバイポーラ電気鑷子を用いることが多い.鑷子には,Mclndoe 鑷子,Adson 鑷子のほか,形成細部鑷子がある.おのおの,有鉤のものと無鉤のものがあり,術者の好みや状況に応じて使い分けるが,組織が挫滅するように強くつかむことを避け,組織のダメージを最小限に抑える意識が重要である.持針器にはMathieu 型とHegar型があるが,形成外科では,皮膚縫合に用いる細かい操作(器械縫合)に適しているHegar 型A. 形成外科的手術手技の特徴12図1? 形成外科で用いる代表的なメスの替え刃と15 番メスの把持法(ペンホルダー)上から15,10,11 番メスの替え刃.図2? モノポーラ電気メス(上)と,バイポーラ止血鑷子(下)バイポーラ止血鑷子では鑷子で出血点をつまんでピンポイントで止血する.