ブックタイトルTEXT形成外科学 改訂3版

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概要

TEXT形成外科学 改訂3版

216各論Ⅰ 先天性疾患胸郭の発生 胎生3 週に沿軸中胚葉の分節で生じる体節は椎板と皮筋板に分離し,胸背部では前者が椎骨や肋骨,後者が体幹の骨間筋や真皮などを形成する.4 週には椎体に肋骨突起が出現し,伸長して肋骨となる.胸骨は6 週に腹側正中に生じる間葉性胸骨帯1 対に由来し,10 週までに互いに癒合しつつ肋骨と結合する.胎生4 週は上肢芽や乳腺堤の発生時期と重なり,胸郭形成異常に上肢や乳房の異常が合併することがある(3 Poland 症候群参照).乳房の発生 胎生4 週には腋窩から鼠径部に左右一対の外肺葉の肥厚帯(乳腺堤:乳線milk line)が生じ,ヒトでは胸部を残し退化する(4副乳参照).6 週頃残存部の表皮成分が間葉内に伸長して乳腺原基(乳腺芽)となり,伸長と分岐により乳管が形成され,胎生後期に表皮陥凹として現れる乳腺窩に開口する.出生直後の乳頭は陥凹しており,小児期に乳輪の結合織増殖により突出し始める(陥没乳頭p.402 参照).新生児期の乳腺は痕跡的で,男性では通常発育しないが(女性化乳房p.404 参照),女性では思春期の線維性基質と脂肪の蓄積により増大する.漏斗胸 前胸壁の漏斗状陥凹を呈する生来の変形で(図1),発生頻度は1,000 人に1~数人程度,性差は4:1 で男性に多い.通常散発性に生じるが,家族内発生もある.原因は肋骨・肋軟骨の過成長が有力だが,Marfan 症候群やPoland 症候群との併発例から結合組織の発生異常の影響が示唆される.多くは乳幼児期に指摘され,成長に伴う陥凹の増強,非対称化を示すが,程度は多様である.多くの場合,内科的症状や心肺機能異常は認めず,時に上気道感染の反復や易疲労性,動悸,胸痛,不整脈を訴える. 診断は病歴と診察から容易だが,乳児期以前は扁桃肥大などに起因する吸気性胸骨部陥凹A. 躯幹の発生12B. 胸壁・乳房の先天異常症1図1?漏斗胸とNuss 法の原理陥凹した胸骨・肋骨・肋軟骨