ブックタイトルTEXT形成外科学 改訂3版

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概要

TEXT形成外科学 改訂3版

284各論Ⅱ 後天性疾患顔面神経核 顔面神経(第7 脳神経)は,脳幹・橋部の顔面神経核からの運動神経線維束と,隣接する上唾液核および孤束核からの味覚線維と内臓遠心性(分泌)線維を含む中間神経という神経束によって構成される混合神経である.顔面神経核とそれより遠位に生じた麻痺を末梢性顔面神経麻痺という.小脳橋角部 脳幹から出た顔面神経は,聴神経などとともに小脳橋角部脳水内を走り,内耳道を通って側頭骨錐体部に入る.この部分で血管による圧迫が生じると,顔面痙攣が発生する.また,小脳橋角部は聴神経腫瘍などの腫瘍が好発する部位であり,聴力低下とともに末梢性顔面神経麻痺の原因となる.側頭骨内 側頭骨内で内耳道から顔面神経と中間神経はまとまって顔面神経管に入る.神経管の側頭骨岩様部で神経が屈曲するところ(顔面神経膝)に膝神経節があり,ここから大錐体神経が分岐する.大錐体神経は,中間神経線維で構成されており,涙腺・口蓋腺の分泌線維であるとともに,軟口蓋の味覚・痛覚を支配する知覚神経を含んでいる.膝神経節の末梢では,まずアブミ骨筋への運動神経が分枝する.三叉神経の鼓膜緊張筋に拮抗して鼓膜を弛緩させる働きがあるため,麻痺の際には聴覚過敏となる.さらにその末梢の顔面神経垂直部で鼓索神経が分岐する.鼓索神経は下顎神経の枝である舌神経と合流して,節後線維は舌下腺と顎下腺に分布する.一方,求心性線維としては舌前2/3 の粘膜からの味覚線維が舌神経から中枢に向かい,延髄の孤束核に到る.側頭骨外 茎乳突孔から側頭骨外へ出た顔面神経は,顎二腹筋,茎突舌骨筋に小筋枝を派生した後,耳下腺内に入る.耳下腺浅葉と深葉の間で顔面神経は頭側から側頭枝,頬骨枝,頬筋枝,下顎縁枝,および頸枝に分枝する(図3).これらの分枝は交通枝を持ち,互いに吻合して神経叢を作る.側頭枝は前頭筋を支配し,下顎縁枝は主に口角下制筋,下唇下制筋を単独に支配するが,頬骨枝と頬筋枝は交通枝が多いため,眼輪筋,頬骨筋,上口唇挙筋群を両者が複合的に支配する. 顔面の表情筋は小さな筋肉の集合体であり,左右対称に存在し,「笑う」などヒトの感情に伴う顔の表情を作る.また,閉瞼や咀嚼などの機能にも関与する.表情筋は顔面半側に約20個ほど存在し,お互いが密接に連携して表情を作っている.以下に主な表情筋をあげる.a 前頭筋 側頭枝により支配される.前頭筋の麻痺は眉毛下垂を生じ,上方視で頭側への移動が不可能なため視野障害を生じる.2345B. 表情筋と顔面神経図3?顔面神経の各分枝手を当てて側頭枝(①:拇指)から頬骨枝(②:示指),頬筋枝(③:中指),下顎縁枝(④:環指),頸枝(⑤:小指)と覚えるとよい.① ②③④⑤