ブックタイトルここまでできる足の鏡視下手術オリエンテーション

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概要

ここまでできる足の鏡視下手術オリエンテーション

総 論 | 第2 章足関節鏡の基本手技10 11D. 使用する器具1. 関節鏡と手術器具a)関節鏡 関節腔内の観察は,関節鏡の先端で関節軟骨を損傷しないように愛護的に行う必要がある.直視鏡を用いた場合,広い視野を得るためには関節鏡の先端を大きく動かす必要があり,医原性の軟骨損傷を生じる危険性は高くなる.そのため,筆者らは基本的に直径2.7 mm の30° 斜視鏡C. 足部の牽引法 足関節は膝関節などと比較して関節裂隙が狭く,安全に関節鏡や鉗子などを挿入するためには,関節裂隙を開大させる必要がある.灌流システムを用いることにより,関節裂隙はある程度開大する.しかし,灌流液の圧や流量により関節裂隙開大の程度が変化するため,これのみでは一定時間内の安定した関節裂隙開大を保つことができない.そのため,筆者らは灌流システムに加え足部の牽引を行ったうえで足関節鏡を行っている.弾性包帯を用いた牽引法は,組織を直接侵襲することなく,安価で容易に行うことができる3).牽引下では前方関節包が伸長されるためワーキングスペースと神経・血管組織が近接し,足関節前方の処置を行う際にこれらを医原性に損傷する危険性が高くなることが報告されている4).したがって,前方の処置を行う際には足関節を背屈することにより前方関節包を弛緩させ,安全なワーキングスペースを確保するようにする(図2). 足関節の牽引に使用するアンクルボード,牽引器およびレッグホルダーは術前に滅菌しておく.術野のドレッシングを行った後,レッグホルダーに患側の下腿を保持し,牽引器とアンクルボードをレッグホルダーに連結する(図1).包帯牽引には,幅約5 cm の滅菌弾性包帯を約80 cm 使用する.包帯の中央部を踵部におき(図3),包帯を適度な緊張下に足背で交差(図4),次に足底で交差させ(図5),同側の足背の包帯の下を通した後(図6), 包帯の両端を遠位で結び(図7),牽引器(3 kg×2)に連結する(図8).この包帯牽引法では,6 kg の牽引力で距腿関節裂隙を約4 mm 開大させることができる(図9).図3  包帯牽引法 その1包帯の中央部を踵部におく.図4  包帯牽引法 その2包帯を適度な緊張下に足背で交差させる.図6  包帯牽引法 その4同側の足背の包帯の下を通す.図8  包帯牽引法 その6牽引器(3 kg×2)につなぐ.図5  包帯牽引法 その3次に足底で交差させる.図7  包帯牽引法 その5包帯の両端を遠位で結ぶ.牽引時背屈時図2  牽引および背屈時の前方関節包牽引下では前方関節包(赤)が伸長され,ワーキングスペースと神経・血管組織(黄)が近接するが,背屈することにより,前方関節包が弛緩し,安全なワーキングスペースが確保される.図9  包帯牽引前後の単純X 線画像6 kg の包帯牽引後は,牽引前と比べ距腿関節裂隙が約4 mm 開大している.(a:牽引前,b:牽引後)a b