ブックタイトルここまでできる足の鏡視下手術オリエンテーション

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概要

ここまでできる足の鏡視下手術オリエンテーション

各 論 | 第1 章46 47足関節(前方)インピンジメント症候群 前方インピンジメントは,脛骨前縁または距骨滑車前縁に生じた骨棘や小骨片のような異常な骨組織により発症する.これらの異常な骨組織は,足関節外側不安定性により回外捻挫が繰り返されることにより前内側縁の関節軟骨が損傷された結果3), またはスポーツ時に繰り返される足関節背屈運動や外傷により脛骨と距骨が直接ぶつかることによる微小骨折の結果4),生じるといわれる.一方,これらの骨棘や小骨片が存在しても,45 ~ 59% の例では無症状であることが知られている5).足関節前方の疼痛や背屈制限は,異常な骨組織が衝突するだけでなく,これらに刺激されることによる関節包の肥大や滑膜の増生が原因とされる4, 6). 良好な治療成績を得るために,術前の3D-CT により骨棘や小骨片の数や位置を確認し,これらを足関節鏡視下に確実に切除する7). 足関節外側不安定性を合併する例では,不安定性が残存すると前方インピンジメントが再発するため,同時に靱帯再建術などの治療を行う必要がある3). 前外側インピンジメントは,比較的軽度の足関節底屈外傷や回外捻挫により前外側の軟部組織が出血を伴い損傷し,これにより生じた瘢痕組織や軟部組織の肥大により発症するとされる8 ~ 10).肥大した前下脛腓靱帯の下縁や,骨棘により生じる例が報告されている(accessory fascicle/Bassett 靱帯)8 ~ 12).足関節前外側部の疼痛は,回外またな回内位で増強する. 治療は足関節鏡視下に病変部の切除を行う. まずは前方の骨棘を切除する.足関節鏡視下手術の基本は,病変に対して遠いポータルから関節鏡を挿入し,近いポータルから手術器具を挿入することである.本例の前方骨棘は外側よりに存在するため,関節鏡を前内側ポータルから,シェーバーを前外側ポータルから挿入する(図3).1 前内側ポータルからの鏡視2 前外側ポータルからの鏡視フローチャート足関節前方インピンジメント症候群の手術手技前外側ポータルからシェーバー・鉗子を刺入し異常組織を切除脛骨前外側縁,外果前縁,距骨滑車前外側縁の骨棘,およびBassett 靱帯の鏡視下評価前内側ポータルからシェーバー・鉗子を刺入し異常組織を切除脛骨前内側縁,内果前縁,距骨滑車前内側縁の骨棘の診断A. 足関節前方インピンジメント症候群Step1 関節鏡および手術器具の挿入2. 鏡視下手術手技 骨棘による足関節前方インピンジメント症候群は,ほとんどの例で足関節外側不安定性を伴っています.これは,「骨棘により足関節の異常な動きを制限する」という生体反応だと考えられています.したがって,骨棘を切除すると不安定性は増大するため,これに対して何らかの処置が必要となります. Bassett 靱帯は,前下脛腓靱帯の最も遠位に存在するbundle です.前下脛腓靱帯の一部にすぎず,仮に切除しても脛腓関節の不安定性は生じないことが知られています. 脛骨前縁から距骨滑車前縁に生じた線維束15) のように,術前の画像診断では診断不能な病変に対しては,足関節鏡は現時点における唯一の診断・治療ツールといえます.熟練医からの提言1. 疾患の概略症 例 術前3D- CT 像において,① 脛骨前縁,② 脛骨前内側から内果前縁,③ 距骨滑車前内側縁,に骨棘の形成を認める(図2).右足関節インピンジメント症候群(31歳,男性)図2 3D-CT 像赤矢印は,① 脛骨前縁の骨棘,② 脛骨前内側から内果前縁の骨棘,③ 距骨滑車前内側縁の骨棘,を示す.①②③図3   関節鏡および手術器具の挿入