ブックタイトル下肢臨床症候の診かた・考え方

ページ
2/10

このページは 下肢臨床症候の診かた・考え方 の電子ブックに掲載されている2ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

下肢臨床症候の診かた・考え方

16臨床診断の基本は,いろいろな手段で集められる情報を統合し,最終診断に向けて正確かつ効率の良い筋道を立てていくことにある.そのためには,網羅的な情報収集と,得られた情報の重み付け・取捨選択を両立させる必要がある.股関節疾患は腰や膝疾患に比べ患者数が少なく,特に慢性疾患の場合,ある程度病期が進行しないと症状と原因の関連性が明らかでないことが多い.したがって,主原因を見誤り股関節症が進行して診断されるため,股関節温存手術の時期を逸することがあり診療に際し注意を要する.さらに思春期では,自覚症状を訴えないことがあるので,保護者を含めた周囲の者が跛行や日常生活動作の異変に気付くことが重要である.思春期・成人という年齢層での股関節・骨盤・大腿部の外傷や疾病に関する診察室における診断の手順(医療面接:問診,身体所見,画像診断や鑑別診断など)について述べる(図1) 1?6).Ⅰ. 入 室2)診断についての情報収集は入室時の状態観察から始まる.急性発症や外傷で疼痛のため歩行できない例では,車椅子やストレッチャーでの入室となり,歩行可能な例でも,杖や松葉杖を使用している場合がある.ここにおいて,疼痛や機能障害の程度が推察でき,同時に表情や動作での疼痛の訴えは,精神的な状態を判断する材料の一つとなる.Ⅱ. 歩 容2)歩容については前と後ろから歩行の各相での観察を行う.以下にいくつかの異常な立位アライメントや跛行のパターンを記載する.思春期・成人の診かた第2 章 股関節・骨盤部の臨床診断総論股関節部痛あり軽度・なしありあり軽度・なしなし 安静時痛 あり なし殿部~下肢痛外傷ステロイド・アルコール血液検査正常異常腰椎・骨盤内病変梨状筋症候群など股関節疾患骨折単純性股関節炎感染腫瘍(骨折)大腿骨頭壊死症Perthes 病大腿骨頭すべり症変形性股関節症膠原病図1  股関節部痛の診断の進め方─思春期から成人─