ブックタイトル下肢臨床症候の診かた・考え方

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概要

下肢臨床症候の診かた・考え方

17思春期・成人の診かた編 股関節・骨盤部Ⅰ1. 疼痛性跛行股関節障害を有する例で特に小児の場合,大腿から膝部の疼痛を訴えることがある.下肢に疼痛が存在する場合,荷重・支持機能が低下するため,歩行において患側下肢荷重相の時間が短縮し,健側足の踏み出し歩幅が減少する.2. 股関節障害による跛行股関節痛を呈したり股関節が亜脱臼位や内反・外反股のような例では,外転筋不全によるTrendelenburg徴候(図2a),Duchenne 現象と表される左右に振れるような歩容異常や,脚長差による墜下性跛行が生じる.荷重に伴って体幹が左右に振れるような跛行がある場合は,股関節疾患をまず考慮する.3. 内旋位歩行歩行時に足部や膝部が内方を向く内旋位歩行は,複数の要因で生じるが,その中に大腿骨の過度前捻や下腿の内捻があり,女性の場合特に注意して診察する.このような症例では,鳶座りが簡単にできることが特徴である(図3).4. 姿 勢姿勢異常を思春期に認めることは少ない.思春期の場合,股関節脱臼や脳性麻痺などを疑う.側弯を認める場合は,脚長差や股関節の拘縮を疑い(図2),特に女性の場合は,脊柱側弯症を鑑別する.腰椎前弯の増強は寛骨臼(臼蓋)形成不全,後弯は骨粗鬆症・腰椎疾患に伴う病変を考慮する.股関節疾患と脊椎疾患や膝疾患が関連したhip─a-1 a-2 b c-1 c-2 c-3図2a :Trendelenburg 徴候(左股関節)1.正常の場合,反対側の骨盤が水平もしくは上昇する.2.患側の場合,反対側の骨盤が外転筋機能不全のため下向する.b :脚長差による代償性脊柱側弯を認め,補高により側弯が消失する.c :立位姿勢(矢状面)正常(若年)では頚椎前弯・胸椎後弯・腰椎前弯であるが(1),加齢とともに骨盤が後傾し脊椎後弯となる(2).一方,寛骨臼(臼蓋)形成不全の場合,骨盤が前傾し腰椎前弯となることが多い(3).図3  鳶座り