ブックタイトル上肢臨床症候の診かた・考え方
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上肢臨床症候の診かた・考え方
240第3 章 手関節・手部の臨床診断各論5.Kienbock 病問診(臨床経過)37 歳女性.既往歴:特記すべきことなし.現病歴:数年前から誘因なく右手関節痛が出現するようになった.しばらく経過をみていたが症状が続くため,初療医受診後紹介受診となった.ポイント 現病歴はさまざまであるが,特に疼痛が労作時または労作後に出現・増強するが安静にすると軽快することが多く,しばらく経過をみていたという症例が多い.視 診外観上明らかな変形はない.ポイント 外観では明らかな変形は認めない例が多く,腫脹を伴うことがあっても軽度である.身体所見右手関節背側中央部の月状骨部に限局した圧痛を認める.手関節可動域は掌背屈,橈尺屈ともに健側に比べ制限されており,握力の低下も認める.ポイント これらの所見は本症に特異的なものではないが,診断および治療方針決定の参考にはなる.検査手順や次回受診のプランニング単純X 線検査は手関節2 方向(正・側面像)を撮影した(図1).正面像で月状骨の圧潰像・硬化像,側面像で分節化像を認めたため,Kienbock 病を疑い,CT,MRI 撮影後の受診を指示した.ポイント 通常診断は臨床所見および単純X 線像により可能である.特に本症では単純X線正面像にて橈骨が尺骨に比べて長いulnar minusvariant との関連が指摘されている.また早期例の診断の際や月状骨内部の壊死の程度の評価のためにMRI を施行することが望ましい.CT 検査は単純X 線のみではわかりにくい圧潰の程度,分節化の程度,治療法の選択の際に目安となるLichtman 分類のstage 判定のために行う.本症例の確定診断手関節単純X 線検査において,正面像で月状骨の圧潰像・硬化像,側面像で分節化像を認め,Kienbock 病と診断した.MRI(図2)で骨壊死の図1 初診時単純X 線像月状骨の圧潰が認められる.