ブックタイトル抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン

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概要

抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン

13CQ1なっている)などさまざまな課題を抱えており,APS 分類基準に定義される検査基準の判断を正確に遵守した臨床研究は少ない.一方,臨床所見に関しても,流死産歴では流産回数や連続性,流死産時期,他の流死産原因の検索の有無などに関して臨床研究間の格差は大きく,統一した見解を見いだすことが困難となっている.胎盤機能不全には胎児心拍数パターン異常,ドップラー血流速度波形異常,羊水過少,胎児発育不全(light for gestational age 児)が含まれるが,実際には胎児発育不全の有無のみが検討対象となっている.また実際の臨床現場では,APS分類基準には含まれない産科合併症に対してもaPL 検査は行われ,APS 分類基準に含まれないaPL 検査に関しても検索されている.今後は対象となる病態の定義を明確にしたうえで多施設共同研究により十分な症例数を確保し,検査自体は集約化して行い,カットオフ値の設定や反復検査のタイミングなど同一条件で評価していくことが求められている 2, 3).今回のCQ1に対する推奨は,本研究班が班員を中心に行ったデルファイ法に基づく見解である.「推奨1」は,aPLを測定することが妥当と判断される状況であり,「推奨2」は,aPL を測定すべきではないと考えられる状況である.「推奨3」はあくまでも研究的検査として行うべき状況であり,過去の研究報告も乏しく,デルファイ法でも結論は導けなかった.検査を行う場合は十分なインフォームドコンセントが必要である.解 説1.aPLを測定することが妥当と判断される状況● 2回以上の連続した妊娠10週未満の原因不明流産の既往多くの過去の研究報告で,習慣流産とaPLとの関連性が示されており,メタアナリシスでも抗カルジオリピン抗体(aCL)IgGとの関連性が報告されている 2-5).aPLに表2-1 抗リン脂質抗体症候群改訂分類基準 (Sapporo criteria,2006年シドニー改変)臨床所見1.血栓症  1回以上の動脈,静脈あるいは小血管血栓症  (血栓症は画像検査や病理検査で確認され,血管炎による閉塞を除く)2. 妊娠合併症 a. 1 回以上の妊娠10 週以降の原因不明子宮内胎児死亡(胎児形態異常なし) b. 1 回以上の子癇,重症妊娠高血圧腎症や胎盤機能不全 *による妊娠34 週未満の早産(新生児形態異常なし)  * 胎盤機能不全には,胎児低酸素症を疑わせる胎児心拍数パターン異常,ドップラー血流速度波形異常,羊水過少,10 パーセンタイル未満のlight for gestational age 児が含まれる c. 3 回以上の連続した妊娠10 週未満の原因不明流産(子宮形態異常,内分泌異常,染色体異常を除く)検査基準(12週以上の間隔で2回以上陽性)1.ループスアンチコアグラント(LA)陽性2.抗カルジオリピン抗体(IgG/IgM)が中高力価(40 GPL/MPL 以上,または健常人の99 パーセンタイル以上)3.抗β2GPⅠ抗体(IgG/IgM)が陽性(健常人の99 パーセンタイル以上)診 断臨床所見の1項目以上,かつ検査基準の1項目以上が存在する