ブックタイトル抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン
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抗リン脂質抗体症候群合併妊娠の診療ガイドライン
511 日常診療のための抗リン脂質抗体検査己のβ2GPⅠであり,β2GPⅠの抗原性は種を越えて共通である.aCL の単位にGPL,MPL という表現が使われる.これは,aCL のアッセイを確立したロンドン・聖トーマス病院のNigel Harrisらが,aPL高力価患者の血漿交換療法の廃棄物から多量のポリクローナルaCL を含むIgG 分画およびIgM 分画を得たとき,そのIgG あるいはIgM の濃度に対応するaCL 力価をGPL,MPL としたことに由来する.各キットには標準曲線を描くための陽性サンプルが添付されていて,その希釈倍数から力価が定義されるが,その際の陽性サンプルはGPL,MPLで標準化されている.しかし,アッセイの条件が異なれば力価も異なり,当初のGPL,MPL の定義づけから長い時間が経っていて,その結果としてキット間でのGPL,MPLの関連は標準化とはほど遠い現状である.クライテリアには「40 GPL,40 MPL 以上が中等度陽性」と記載され,エントリー基準となっているが,上記の事情から現在はこの基準は用いられず,各施設もしくは各キットで測定した健常人99 パーセンタイルをカットオフとする,という定義が用いられている.aCLがAPS以外でも検出されることは前述したとおりである.APS に特異的なaCLは非特異的なaCLより一般に高力価である.さらに,APS に特異性の高いaCLは,精製β2GPⅠをコファクターとして用いた「β2GPⅠ依存性aCL」とよばれるアッセイで検出される抗体である.このELISA ではβ2GPⅠの存在下および非存在下で同時にaCLの測定を行い,前者の力価が基準値を超え,かつβ2GPⅠの存在下でのaCLの力価が非存在下での力価よりも高いものを陽性とする.β2GPⅠ依存性aCL は「抗カルジオリピン・β2GPⅠ複合体抗体」ともよばれるが,測定系としてはあくまでもaCLである.このアッセイで使用するβ2GPⅠはヒト由来なので,後述の抗β2GPⅠ抗体と検出する自己抗体は多くが共通であるため,抗β2GPⅠ抗体の代用として用いられることもあるが,測定系は両者で異なることを知っておくべきである.2.抗β2-グリコプロテインⅠ抗体β2GPⅠはAPSに特異的なaCLの対応エピトープを担っている.しかし,そのβ2GPⅠのエピトープはβ2GPⅠが陰性リン脂質に結合しなければ露出しない.すなわち,β2GPⅠのエピトープの発現にはβ2GPⅠと陰性リン脂質との相互作用によるβ2GPⅠの構造変化が必要であって,血漿に存在するそのままの形のβ2GPⅠにはaCL は結合できない.この構造変化は,陰性リン脂質が存在しなくても,γ線照射などにより酸素原子を導入したプラスチック表面にβ2GPⅠが結合することで再現できた.これを利用したのが「抗β2GPⅠ抗体」というアッセイである.カルジオリピンが存在しないのにaCL を測定できる系,ということになる 3).抗β2GPⅠ抗体の系では上記の非特異的aCL が検出されないので,APS に対する特異性が高い.一方,ELISA特有の「ノイズ」が混入しやすいので,低力価陽性の場合はその解釈に注意を要する.保険適用外ではあるが,2016 年現在,研究用アッセイとしてわが国でも商業ベースでの測定が可能となっている.前述のβ2GPⅠ依存性抗カルジオリピン抗体と検出する抗体はオーバーラップするが,自己抗体の多様性に由