ブックタイトルまるわかり創傷治療のキホン
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まるわかり創傷治療のキホン
顔 面顔面では薄く目立たないドレッシングが好まれるので,口唇や眼瞼に及ばない創であれば,薄いハイドロコロイド(デュオアクティブ?ET),ハイドロサイト?薄型などを使うことが多い.広範囲に及ぶ場合や口唇,眼瞼に及ぶ創では,ワセリン基剤の外用剤を使用し,被覆せず開放にしておく場合もある.手 指手指では,創部の大きさや立体的な形状に合わせて切り分けて使用できる薄いハイドロコロイド(デュオアクティブ?ET),ハイドロサイト?薄型などが便利である.指尖部では,厚みがありクッション性を有する製品(ハイドロサイト?,メピレックス?ボーダー)が,同部が外力を受けた際の疼痛緩和に役立つ.手掌・足底手掌や足底の皮膚は浸軟しやすいため(図2-66),滲出液が多い熱傷早期には,外用剤と吸水性に富むトップドレッシングを併用することが多い.滲出液が減少してくれば,ドレッシング材に変更し徐々に簡便で薄いドレッシングが可能になる.創傷部位に応じた使い分け・使い方図2-66 ドレッシング材による不具合①フィルム内の滲出液で,正常な足底皮膚まで浸軟している.Ⅲ 外用剤・ドレッシング材の種類と使い方 2 創傷状態・部位に応じた使い分け・使い方93褥瘡好発部位にも多彩な皮膚疾患が見られる褥瘡に対する認識が高まり,あらゆる医療職の人たちが褥瘡に対する高い関心を有するようになった結果,褥瘡発生が抑制され,正しい予防と管理がチーム医療で推進されるようになったことは極めて喜ばしいことである.しかし,そのような潮流の中で,「臀部に皮膚病変ができれば全て褥瘡」という短絡的な発想が芽生えていることに憂慮を感じる皮膚科医も少なくない.臀部を含む褥瘡好発部位といえども,感染症,腫瘍,接触皮膚炎,他の原因による皮膚潰瘍など,あらゆる皮膚疾患が起こることは当然であり,その皮膚疾患を逐一鑑別していかないといかに正しい褥瘡管理が行われようと皮膚症状は解決しない.本項では,褥瘡好発部位に発症する褥瘡と間違えやすい多彩な皮膚疾患を列挙し,「臀部にできた皮膚病変は全て褥瘡」という短絡的な発想に対する注意を喚起したい.「臀部に皮膚病変ができれば全て褥瘡」という短絡的な発想筆者の自験例をまず示す1).症例は85歳女性で,当院他科入院時に看護師によって左臀部に3cm程度の皮膚病変を指摘されたが,皮膚科へのコンサルトはなく,担当医師に報告の上「肉芽良好な褥瘡」として対処された(図3-2 a).10ヵ月後に11cmにまで増大した腫瘤となり,大量出血を来して当科を受診した際には,腫瘤は易出血性の辺縁不整な隆起性病変で,表面はびらん,色調は暗赤色であり,悪臭が著明であった.左鼠径部には9cm大のリンパ節転移も認めた(図3-2 b).病理診断は線維粘液肉腫であった.自験例では,看護師が肉芽良好な褥瘡と誤認したこと,担当褥瘡と間違えやすい皮膚疾患2 褥瘡の創のみかたⅠ 褥瘡a「 良好な肉芽形成」と記載された臀部皮膚腫瘍b 10ヵ月後,直径11cmに増大した腫瘍は大量出血を来し,病理診断は線維粘液肉腫であった図3-2 「 臀部にできれば全て褥瘡」という短絡的な発想に警鐘(文献1より引用)123