ブックタイトルスキンケアの科学

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概要

スキンケアの科学

1 もう50 数年も昔,京都大学医学部の専門過程1 年生の講義が,朝9 時からの解剖学で始まった.「人体のさまざまな臓器の名称とそれらの構造を頭に叩き込まずして,その後の医学の勉強は進まないぞ」という感じの教官方の教育熱心さを肌で感じさせられた.一方,専門課程に進学したての学生たちも新鮮で高揚した気持ちにあり,100 人のクラス全員が顔を揃え,講堂も満席状態であった. 今でも鮮明に心に焼きついていることは,人体の構造について徹底的に記憶させられたことである.それまでまったく馴染みもなかった膨大な人体解剖学を,英独仏語でもなく基礎知識も何もないラテン語名で片っ端から覚え込むことを強制された.それができたのも最初が肝腎という心構えが誰にもあったからこそである.下宿へ帰っても,厚く,どっしりと重い2 冊の歴史的なドイツ語のRauber?Kopsch の教科書を手元に,記憶力の限りの懸命な勉強を続けた. さらに,解剖学の実習の各ステップには,しっかり理解しているかどうか,教官が一対一で確かめる口頭試問があり,それに合格しないと次のステップには進ませてはもらえなかった. 学生たちも皆,実習時間を大幅に超過して夜までも作業を続けるのが例年の常のことと聞かされており,もちろん,教官側もそれを黙認していた.もし,中途半端な勉強で記憶があやふやであると,ビーコン〔ドイツ語の“wieder kommen(もう一度,来なさい)”の略〕,と勉強のやり直しを求められる.とにもかくにも,全ての試問を期限の日程内にクリアするためには猛勉強しかないという解剖学教育の厳しさだけは,今でも鮮明に頭に浮かんでくる. というのは,その前,難関の医学部進学過程入試を必死の受験勉強で合格してからの教養学部の2 年間は,語学,数学,物理,化学,生物の基本教科以外解剖学実習で出会ったヒトの革袋第1 章皮膚の構造とその働き