ブックタイトル外用薬の特性に基づいた褥瘡外用療法のキホン
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外用薬の特性に基づいた褥瘡外用療法のキホン
褥瘡,特に深い褥瘡に対する外用薬物治療の必要性は高く,現実に多くの重度褥瘡は外用薬で治療されている.しかし,褥瘡への外用薬物療法に関する基礎的な知見は不足している上に,皮膚科学や薬理学の中に体系化されているとは言いがたい.要因としては多岐にわたるが,褥瘡の治療に影響する因子が多様であること,創の変形による薬剤の滞留の問題,創の多様性が著しいことなどが挙げられる1).さらに,最も根本的な基剤の創組織への作用機序は解明されておらず,単に基剤は主剤を溶かすものと考えられていた.よって実地においても基剤の薬理学的作用を理解した上での治療は難しいために,経験的に治療を選択せざるを得なかった.図1-8のように,薬物療法の対象となる深い褥瘡での基剤の標的組織は創組織,とりわけ肉芽組織と考えられる.そのため,薬学的な視点と皮膚科学的な視点を併せ持った研究が必要である.本稿では「創傷と基剤との境界面における反応」といった新しい概念のもとに解説を試みてみたい.深い褥瘡の外用治療の過程では,赤色期と呼ばれる肉芽組織形成時期を経由して治癒していく.褥瘡の治癒が速やかにいく褥瘡治療過程における創病態の変遷の理解外用薬(基剤)肉芽組織瘢痕に置き換わっていく組織創組織と薬剤の界面図1-8 褥瘡肉芽組織と薬剤の相互作用に関する概念図薬剤(基剤)の直接作用する主な組織は肉芽組織である.? 基剤の褥瘡に及ぼす薬理学的機序は解明されていない.? 深い褥瘡治癒過程における肉芽組織の変化を理解することが重要である.? 創と基剤の界面では創傷表面分子と基剤が特異的に相互作用していると考えられる.? 実験的創傷治癒過程では基剤のみでも異なった組織を誘導することが示された.Key Learning Point4 基剤の薬理学的作用25