ブックタイトル外用薬の特性に基づいた褥瘡外用療法のキホン
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外用薬の特性に基づいた褥瘡外用療法のキホン
かどうかは,この赤色期の治癒過程に依存することが多く,この時期の治療は重要である.そこでの治療に際して,基剤が作用する組織は,表皮に覆われた組織ではなく,肉芽組織であることを念頭におく必要がある.褥瘡でみられる良好な肉芽組織では,病理学的に薄い壊死層の下層に多くの新生血管が縦方向に走行し,線維芽細胞,線維性のマトリックスおよび炎症細胞浸潤のある肉芽層,最下層にコラーゲン線維が豊富な線維化した層がみられる2).しかし,治療経過のすべての時期で良好な肉芽組織を呈する場合は,褥瘡において例外的だと思われる.図1-9はⅣ度褥瘡の治療経過による創傷組織変遷である.壊死組織が除去された後(図1-9a),記載潰瘍学で定義された浮腫性肉芽組織3)が出現すると,比較的速やかに肉芽組織の容積が増えて創傷の容積は減少する(図1-9bからc).この例から理解できるように,浮腫性肉芽組織の存在自体は創容積を減少させるが,このような状態が長期に遷延することはしばしば問題である.浮腫性肉芽組織は病理組織学的に肉芽層が滲出液で腫大化し,拡張した血管がみられ,細胞外の浮腫が多く,線維性の結合組織成分は少ない(森,磯貝ら未発表データ).つまり浮腫性肉芽組織は一種の過剰な炎症病態として捉えることができる.創傷治癒過程での炎症は必要であるものの,次の過程に順調に移行させることが臨床では必要とされる.図1-9のその後の経過では,吸水性をもつ外用薬の使用によって浮腫性肉芽組織が消失し,創が収縮(図1-9d)していく図1-9 褥瘡治癒過程における薬物治療と創所見の変化治癒経過や薬剤(基剤)によって潰瘍内の記載潰瘍学的所見が変化してくる.創傷組織肉芽形成の開始肉芽の増生過剰な浮腫性肉芽の増生肉芽の平坦化 → 創収縮補水性基剤吸水性基剤瘢痕化a b 浮腫性肉芽 c d第1章外用薬の特性26