ブックタイトル外用薬の特性に基づいた褥瘡外用療法のキホン

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概要

外用薬の特性に基づいた褥瘡外用療法のキホン

85歳女性に発症した背部褥瘡である.壊死組織で被われていたため深さは不明であるが,状況から全層が壊死に至る褥瘡と推定される.自宅療養中に転倒して他院に入院し,胃癌が発見されたが,高齢のため手術は希望されず,再び自宅療養となる.認知症が進行し,寝たきりの全介助状態となり円背の椎骨突起上に褥瘡が発症する.訪問看護が対応するが,悪化を防止できず発症から3ヵ月後に当院に入院となる.摂食障害のため身長150cm, 体重27.3kgでBMI 12.1,Alb 2.4g/dL,Hb 8.4g/dLと低栄養状態である.褥瘡は椎骨突起上に形成され,るい痩のために皮膚は大きくたるみ,創は移動が著明であることから,壊死組織を除去した段階で創は大きく移動・変形することが予想される.そのため治療中は創の固定が必須であり,体圧分散寝具の適正な選択・使用とともに創に対する外力の影響を極力抑制する必要がある.創の移動・変形は薬剤滞留障害をもたらし,創内に使用した軟膏は変形により外部へ押し出され,効果が期待できない状況に陥る.外科的デブリードマン後,薬剤による化学的デブリードマンを開始する.侵襲は靭帯にまで達する可能性があり,薬剤は壊死組織除去作用をもつヨードホルムガーゼ,タンパク分解酵素のブロメライン軟膏を選択するが,滲出液が少ないため壊死組織軟化作用のゲーベンRクリームを併用する.清浄化された時点で創の変形は大きくなり,全周性にポケット形成がある.創固定を開始し,テーピングとレストンTMによる創外固定とベスキチンRW-A(生体成分由来材料)による創内固定を使用する.まずポケット内の肉芽形成を促す必要胃噴門部癌,アルツハイマー型認知症,四肢拘縮,円背,るい痩,摂食障害を有する高齢者における著明な移動・変形を伴う難治性背部褥瘡症例8創固定と薬剤滞留性を考慮した8 外用療法を学ぶ215