ブックタイトルアトピー性皮膚炎治療のためのステロイド外用薬パーフェクトブック

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概要

アトピー性皮膚炎治療のためのステロイド外用薬パーフェクトブック

2 アトピー性皮膚炎に対するステロイド外用薬の作用機序本項では,まずステロイド薬の一般的な薬理作用について述べ,次にアトピー性皮膚炎(AD)の病態におけるステロイド外用薬の作用点について解説する.タキフィラキシーについても言及し,作用機序からみたステロイド外用薬の望ましい使用法についても簡単に触れたい.ステロイド薬の一般的な薬理作用ステロイド薬の薬効として最大のものは抗炎症作用である.歴史的には,1948年に最初の報告がなされたステロイド薬の薬理作用はリウマチ性関節炎に対する消炎・除痛であり,ベッドに寝たきりの患者が歩き出したということで一大ニュースになったとされている.糖質コルチコイドは生体にとって不可欠のホルモンであるゆえ,ステロイド薬はあらゆる細胞の機能を修飾するといっても過言ではない.そのことが強力な抗炎症効果につながるのだが,逆に多くの副作用を発現させてしまうことにもなる.ステロイド薬は,細胞質に存在する受容体へ結合後に核内へ移行し,ステロイド反応性の遺伝子を活性化するほか,急性期タンパクや炎症性サイトカイン遺伝子の発現を抑制し,さらに直接作用によるアポトーシス誘導なども介して抗炎症作用を発現する1).ステロイド薬が結合するステロイド受容体は種々の細胞内に普遍的に存在しており,ステロイド受容体結合体それ自身が転写因子として働いて生理活性タンパク・酵素を誘導し,多彩な薬理作用を示す.そのホルモンとしての作用を別とすれば,ステロイド薬の主な薬理作用は抗炎症作用のほかに,免疫抑制作用,細胞増殖抑制作用などがある.ステロイド薬の免疫抑制作用は,T細胞に集中的に作用するシクロスポリンやタクロリムスとは異なり,T細胞やB細胞,マクロファージなどあらゆる免疫担当細胞に及び,抗体産生抑制など液性免疫への抑制効果も含め,多彩で非選択的である.しかし,臨床用量でのT細胞の活性化抑制作用はタクロリムスとの比較でも著明ではなく,それは臓器移植後の拒絶反応防止において,ステロイド薬がシクロスポリンやタクロリムスのように基礎免疫抑制薬にはなり得ないことからも明らかであろう.この違いは,T細胞活性化に働く種々のサイトカインの遺伝子発現抑制のメカニズムに由来している.す11