ブックタイトル在宅医療の排尿管理と排泄ケア
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在宅医療の排尿管理と排泄ケア
204Ⅲ ● 排泄ケアに関する知識と技術事例1 脳血管性認知症 63 歳 男性下着の上げ下げがうまくできず失禁と捉えられていたF さんF さんは1 人暮らしをしていたアパートで倒れているところを発見され病院に搬送された.診断は脱水症であり,短期間で回復したが,古い脳梗塞が発見され軽度の右片麻痺,認知機能低下も明らかとなり,日常生活の様子をアセスメントした結果,1 人暮らしの継続は困難と判断された.医療ソーシャルワーカー(MSW)により介護保険の申請がされ,調査の結果,要介護3 の判定が出た.本人自身も1 人暮らしに不安を覚え,様々な選択肢を提供した結果,24 時間安心して生活することを希望され特別養護老人ホームへ入居された.入居時に病院からの申し送りでは「常時,失禁がある.排泄ケアを拒み,介入が非常に難しい.入院以前に勤めていた飲食店も失禁が原因で解雇された」とのことであった.入居されてからのF さんは構語障害があることと,元来人付き合いがあまり得意ではない様子で他者との関わりも少し距離をとっているようだった.病院看護師からの申し送りのように失禁状態であったので関わろうと声かけしても「自分で行く」とそっぽを向き,下着の交換を促しても手を払いのけるなど介護がうまく届かなかった.入居から1 週間目のカンファレンスでは,排泄介助がうまくいかないことに対しての検討が中心になった.介護職員は「やはり病院と同じで関わりが難しい人だ」と判断していた.情報から考えられることを整理,背景を探る・ 失禁があるのは何か疾患が隠れているのではないか?⇒入院中に泌尿器科受診したが所見はなかった.・ 脳梗塞後遺症により排尿感覚が鈍く尿意がわかりにくいのではないか?⇒神経内科での所見はない.・ 尿意はわかっていても動き出しに手間がかかり,そのうちに漏れてしまうのではないか?⇒機能性尿失禁の可能性がある.・ 排尿を失敗してしまったことを恥ずかしく思い,介護を拒んでしまうのではないか?・性格的なことから下着の交換がめんどうなのではないか?