ブックタイトルクロストークから読み解く周産期メンタルヘルス
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クロストークから読み解く周産期メンタルヘルス
序 今日,周産期のメンタルヘルスは新たな局面を迎えています.その一つに,先端医学の進展に伴って,不妊治療,出生前検査,流産による死別反応などといった準臨床的問題に対するメンタル・サポートが求められていることがあります.一方,最近の周産期精神医療では,発病リスクの高い妊産婦を対象に妊娠早期からエビデンスに基づいた方法による介入に注目が集まっています. さて,こうした課題に対応するためには,第一に周産期メンタルヘルスに関与する各専門家の情報の共有(特に母子保健と精神保健)が必要となります.そして,多職種が院内外において連携を通して,妊産婦のケア・プランが共有されなければなりません.さらに,母子の育児・生活の場に関連する社会保健福祉機関などからのアウトリーチ支援の構築も検討しなければなりません.つまり,今日の周産期のメンタルヘルス・ケアは,多職種のマンパワーが緊密な相互連携を保ち,さらに包括的な支援を構築する能力が求められる時代になったといえます. そこで,主に総合病院における周産期メンタルヘルスの代表的な架空事例を想定して,それに関与するさまざまな職種の医療保健福祉関係者が,クロストーク(対話形式)による治療を展開するというユニークな企画をもとに本書が作られました.なお,本書は「精神科医×薬剤師クロストークから読み解く精神科薬物療法」(南山堂)から発展して生まれました. 目的は,クロストークを通じて多職種間連携を容易に習得でき,統合された実践的治療が進展することです.本書は,従来の事例集とは異なった内容です.クロストークの相手は,産科医,精神科医,助産師,看護師,保健師,臨床心理士,精神保健福祉士,新生児医,小児科医などです.また,対話は精神科医×産科医や精神科医×助産師といった1 対1 のほか,産科医×精神科医×助産師×薬剤師など複数名のクロストークが連続する場合もあり,ダイナミックに展開します.クロストークの方法も,対面式以外に電話やミニカンファレンスなど,さまざまな場面で展開されています.さらに,各領域の専門用語についてはできるだけ解説を入れました.完成して読み直すと,多職種間における実践的な臨床場面の連携の様子が,クロストークによって生き生きと展開され,さながらな醍醐味のある「物語」ができました.また,事例からは,執筆者のこれまでの臨床経験や妊産婦に対する優しいまなざしを彷彿とさせる場面も読み取ることができました. 本書は,周産期メンタルヘルスの臨床的課題の中で,過去に苦労をされた方,最新の母子精神保健の情報を入手したい方,社会福祉関係との連携がもう一つわからない方に最適の実用書であると思います. 最後に,本書のユニークな企画と編集に対して,最後まで柔軟で忍耐強いご尽力をいただいた南山堂の山田歩様はじめ皆さまにお礼を申し上げます.また,周産期メンタルヘルスの現場の臨場感あふれる連携の醍醐味を記載していただいた筆者の皆さまに感謝申し上げます. 2016 年7 月編者を代表して 岡野 禎治