ブックタイトル妊婦の精神疾患と向精神薬
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妊婦の精神疾患と向精神薬
根拠に基づく医療(EBM)の出現以来,医療に携わるすべての職種の学生は,それぞれの専門分野における絶え間ない変化に対応し,最新の医療を行うために必要な技術を学ぶことが期待されている.しかし,文献の批評的評価は単純な作業ではなく,大部分の臨床医は彼らが読んだ文献の複雑な性質を完全に理解するための疫学や統計学の知識を持ち合わせていないので,見かけほど簡単なことではない.したがって,抗うつ薬などの治療に関する情報が患者に適切に伝えられるかわからないので,予想外に個人に害を及ぼす可能性がある1).統計的有意性と結果の臨床的関連性との違いなどを理解するための十分な基礎知識を臨床医が持っているならば,文献の批判的評価を適切に行うことができるかもしれない.実際に,臨床的に重要であろうとなかろうと,有意な(または陽性の)結果の方が発表されやすいため,このことは理解すべき最も重要な情報の1つである2, 3).読者は文献の批判的評価を行う前に,妊婦が含まれる公表文献で用いられているさまざまなタイプの観察研究に関する包括的な知識を持たなければならない.無作為化比較試験(RCT)は最もエビデンスレベルが高い方法と考えられているが,胎児発生へのリスクが不明であるため,妊婦にこのような試験を行うことは倫理的に問題がある.観察研究としてエビデンスレベルが最も低いものから高いものまで,さまざまな種類の研究を以下に示す.症例報告は,いわば“信号発生器”で,潜在的な問題を見いだし,より精度の高い調査を行うきっかけとなりうる.しかし,症例報告の主な制限は,他にも多くの同じ曝露で同じ異常を生じた症例が報告されない限り,因果関係を特定することができない.妊婦で最も古典的な例は,サリドマイドに関する症例報告である.McBride博士はLancetで,サリドマイド曝露児における多指症,合指症,長骨の形成異常(異常に短い大腿骨と橈骨)を数例経験したことを報告した.彼はその後,「この薬を服用した後に同じような異常が起こった症例を見たことがありますか?」と読者に質はじめに研究の種類1 症例報告22