ブックタイトル地域とつながる 高齢者救急実践ガイド

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地域とつながる 高齢者救急実践ガイド

1332.高齢者に起こりやすい急性症状,疾患と診断・治療15 認知症POINT▲アルツハイマー型認知症(AD)は症状が出る20 年も前から脳に変化が始まる.▲AD の治療には,コリンエステラーゼ(ChE)阻害薬とNMDA受容体拮抗薬が使用される.▲ChE阻害薬は悪心,嘔吐,下痢,食欲不振などの消化器症状,メマンチンは眠気,ふらつき,頭痛の副作用が多い.認知症は,正常に発達した知的機能が後天的な脳の器質性障害によって持続性に低下し,日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態である.認知症は65歳以上の高齢者の15%,2012年時点でも460万人にのぼることが厚生労働省研究班より推計され,今後も患者数の増加が見込まれる.救急医療の現場で診療にあたる医師にとっても,認知症の基礎知識,治療薬の特徴や副作用について理解を深めることは,救急で遭遇することの多い認知症患者を診療する際に役立つと思われる.なお.認知症は多様な原因で起こるが,本稿ではその約6割を占めるアルツハイマー型認知症を中心に述べる.アルツハイマー型認知症病理・病態(図2-15-1)アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease:AD)脳の病理変化として,アミロイドβによる老人斑とリン酸化タウタンパクによる神経原線維変化が特徴的である 1).これらの変化が15?20年をかけて脳に出現していき,神経細胞が変性・脱落して脳機能の低下が起こる.最初に,記憶や言語の理解をつかさどる海馬・側頭葉に病変が起こるため,症状として記憶障害(もの忘れ)から始まり,時間の見当識障害(日付がわからなくなる)など日常生活に支障が出るようになる.次いで空間認識を