ブックタイトル地域とつながる 高齢者救急実践ガイド
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地域とつながる 高齢者救急実践ガイド
1632.高齢者に起こりやすい急性症状,疾患と診断・治療19 高齢者への処方の注意POINT▲服薬の状況を正確に把握しなければならない.▲多剤の投与は避け,薬剤数を減らすよう心がける(6 剤以下を目標に).▲予期せぬ副作用や事故が起こることがある.通常の高齢者でも気をつけるべきこと多剤併用の状況一般的に高齢者は多病であり,常用している薬剤が多岐にわたることが多い.そのため,若年者と比較して薬物有害事象の出現頻度が高くなる 1).急性期病院の入院症例では,高齢者の6?15%に有害事象を認めるとの報告もある.外来症例でも,1 年あたり10%以上の薬物有害事象が出現するとされる 2).通院している医療機関が複数にまたがっていることも珍しくない.そのため,医療機関同士の連携不足によるものも含め,薬剤の相互作用による副作用がしばしば認められる.多剤併用による有害事象は,加齢とともに上昇するという報告もある.高齢入院患者の3?6%は,薬剤起因性の疾患といわれており 3),かつ重症化しやすく,入院期間が長期化する傾向にある.服薬アドヒアランスの管理患者本人に病識がなかったり,服薬の必要性が理解できなかったりするために,服薬が順守されないことや,服薬拒否などが起こりうる.また,記憶力の障害による飲み忘れや飲み間違いも起こりやすい.さらに飲み間違いにより,過量投与となってしまった場合は,重篤な副作用が出現することもある.認知機能障害を伴っている患者では,特に注意が必要である.服薬アドヒアランスの管理は,本来の治療効果が期待できないだけでなく,有害事象を引き起こすリスクを上昇させてしまう.アドヒアランスを向上させるための工夫を表2-19-1に示す 4).