ブックタイトル乳癌アプリケーションノート
- ページ
- 4/10
このページは 乳癌アプリケーションノート の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 乳癌アプリケーションノート の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
乳癌アプリケーションノート
29?1.局所療法:手術3. 乳房温存療法後の断端の評価と対応●術中における断端評価 1)・術中に温存術の側方断端の3 ?4 カ所(うち1 カ所は乳頭側を含む)を迅速病理診断にて確認する.断端陽性の場合,断端が陰性となるまでその場で追加切除を行う.・施設において迅速病理診断が施行できない場合は,永久病理診断のみでもかまわないが,後日追加切除を要する可能性は高くなる.●断端陽性・近接時の対応・断端陽性は温存乳房内再発のリスク因子であるため,永久病理診断における断端の状況により,以下の対応を行う 2, 3).・下記の場合は追加切除を行う.ただし,深部断端は胸筋浸潤がなければ考慮しない.(1)浸潤癌が露出.(2)複数切片で非浸潤癌を含む断端が露出.(3) 1 切片以上で非浸潤癌を含む断端が露出し,かつ広範なEIC 陽性を認める.・上記(1) ?( 3)には該当しないが,断端露出が認められるときは,追加切除を推奨する.ただし患者希望により追加切除を行わないときは,十分なインフォームドコンセントを行ったうえ,boost 照射で対応してもよい.・断端露出は認めないが,非浸潤癌成分を含め断端からの距離が5 mm 以内である場合,原則としてboost 照射を行う.1) Fukamachi K, et al:Jpn J Clin Oncol,40(6):513─520, 2010.2) Park CC, et al:J Clin Oncol, 18(8):1668─1675, 2000.3) Freedman G, et al:Int J RadiatOncol Biol Phys, 44(5):1005─1015, 1999.前項で述べたように,乳房温存療法は乳房切除術に比較して生存率に差がないことが証明されている.一方,乳房温存療法における断端陽性は温存乳房内再発のリスク因子であり 2, 3),さらに温存乳房内再発は予後不良因子であるとの報告もあることから 4),乳房温存療法を施行する際には,断端陰性を達成するよう努めることが望ましい.しかしながら,断端陽性が直接予後不良因子となりうるかについては,前向きに比較した試験が存在しないこと,補助薬物療法の効果が局所制御にも及ぶこと 5)を考慮すると,判然とはしていないのが現状である.また,わが国では2005 年に「乳房温存療法ガイドライン」が発行されて以降,切除断端から5 mm 以内に癌細胞があるものを断端陽性としているが,国際的には統一された基準はなく,文献により露出がないものから5 mm 以内に癌がないものまでさまざまである 6).以上のように,乳房温存療法における断端の扱いには,確固とした目標点が定まっていない.「乳癌診療ガイドライン」(2013 年版)においても,癌遺残の量が多いと推定されるときは,外科的切除が勧められる(追加切除の推奨グレードB)が,癌遺残の量が少ないと予想されるときには,適切な術後療法で局所制御が可能な場合がある(追加切除の推奨グレードC1)となっている.本文中に示した国立がん研究センター中央病院での断端対応方法は,現在までのエビデンスから筆者らがreasonable と判断して運用している方法である.さて,温存術における術中の切除断端検索法にも統一された基準はなく,施設ごとにさまざまな方法が試みられている.大きく分けると凍結標本による組織学的検索法と捺印細胞診による方法があるが,前者,後者とも感度,特異度は検査として推奨するに値する良好な成績が得られている 7, 8).また,術中の断端検索により再切除率の低減も図れることから 1, 8),国立がん研究センター中央病院では病理医,検査技師の協力により,全例で術中の迅速組織診断を施行している.しかしながら,断端陽性部位が適切にサンプリングされなければ術中迅速診断は偽陰性となる.また,病理医の負担も大きいことから,すべての施設で乳房温存療法における術中の断端検索を必須とすることはできない.4)Komoike, et al:Cancer, 106(1):35─41, 2006. 5)Fisher B, et al:J Clin Oncol, 20(20):4141─4149, 2002. 6)Singletary SE, et al:Am J Surg, 184(5):383─393, 2002. 7)Klimberg VS, et al:Surg Oncol, 8(2):77─84, 1999. 8)Esbone K, et al:Ann Surg Oncol, 19(10):3236─3245, 2012.Evidence からの考察〔麻賀創太〕