ブックタイトル乳癌アプリケーションノート
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乳癌アプリケーションノート
113?2.薬物療法●一般的には血中のエストラジオールが10pg/ mL 未満,FSH が40mIU / mL以上を示す場合に閉経であると考える.しかし,薬剤による人工的な閉経の場合には,卵巣機能が回復する可能性があり,経時的にモニターを行い,判断する必要がある.●卵巣機能抑制の方法には以下の3 つの方法がある.・手術療法(両側卵巣切除)・薬物療法(LH─RH アナログの使用)・放射線療法(骨盤照射)これら3 つの方法での卵巣機能抑制効果,生存期間の差はない 3, 4).一般的には薬物療法(LH─RH アナログ)が使用される.3)Taylor CW, et al:J Clin Oncol, 16(3):994─999, 1998.4)Hughes LL, et al:Cancer, 101(5):969─972, 2004.〔温泉川真由〕・内分泌療法の選択,術後内分泌治療からの期間と内分泌治療抵抗性の判断どの内分泌療法を選択するかに関しては,図Ⅲ- 4 に示すとおり,①閉経の状態(閉経前,閉経後),②術後内分泌治療からの期間,を考慮する必要がある.閉経前女性は卵巣からエストロゲンが分泌され,閉経後女性は卵巣機能低下により,副腎で産生されアンドロゲンが脂肪にあるアロマターゼという酵素の働きでエストロゲンに変換される.そのため,閉経前後で内分泌療法の選択がかわる.術後内分泌治療からの期間については,明確な基準はないが,多くの臨床試験で術後内分泌治療から12 カ月以上経過している場合に術後内分泌療法感受性ありと考え前回と同じ内分泌治療を選択する.一方,12 カ月未満であれば,術後内分泌療法抵抗性と考え違う薬剤(第2 選択薬)を選択する.その際,閉経前ホルモン受容体陽性乳癌で術後にtamoxifen のみの治療の場合には,tamoxifen + LH─RH アナログも選択肢となる.詳細は次項で述べる.・閉経の判断基準閉経状態は12 カ月以上の無月経の確認をするか,黄体ホルモンを投与しても消退出血を認めないことにより判定される.特殊な状況としては,両側卵巣切除,子宮摘出後,があるが,両側卵巣切除した場合には切除の時点を閉経とする.一方,子宮摘出後の場合には血漿学的な検査が参考になる.一般的に閉経女性のFSH は70 ?100 IU / L になることが多く,基準は血漿エストラジオールが10 pg/ mL 以下,FSH 値が40 IU/ L 以上である.・卵巣機能抑制の方法卵巣機能抑制の方法には,手術療法(両側卵巣切除),放射線療法(骨盤照射),薬物療法(LH─RH アナログの使用)がある.閉経前ホルモン受容体陽性転移・再発乳癌患者に卵巣切除とLH─RH アゴニスト(goserelin 3.6mg 皮下注,4週間ごと)での卵巣機能抑制の比較が行われたが,症例の集積が悪く,136 例の登録で中止された.結果は,主要評価項目である生存期間で両治療に有意な差はなかった(HR 0.80,95%CI:0.53 ?1.20).有害事象としては,ホットフラッシュ(66 % vs 43 %,p = 0.001)とtumor flare reactions(データ詳細不明,p = 0.01)がgoserelin 群で有意に多かったが,その他,重篤な有害事象は認めなかった.閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対して行われたEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)の行ったE3 193 試験は術後補助療法としてtamoxifen とtamoxifen +卵巣機能抑制との比較試験である.その中で,卵巣機能抑制の方法については手術,放射線治療,薬物療法の3 法を行っている.結果としては,症例の集積が悪く,卵巣機能抑制を174 例に行ったところで試験が中止になっている.放射線治療(骨盤照射,20 Gy / 10 Fr)を施行された20 例の解析では,75%で卵巣機能抑制に成功している.なお,有害事象としては,急性毒性でGrade3/ 4 のものはなかった.一般的には卵巣への照射が10 ?20 Gy で卵巣機能抑制につながるとされる.以上が卵巣機能抑制に対するエビデンスであるが,手術による卵巣切除が理論的には最も確実な方法であると考えられている.しかし,症例数が少ない検討であるとはいえ,薬物療法による卵巣機能効果の有用性のデータもあること,簡便さから一般的には薬物による卵巣機能抑制が行われることが多い.Evidence からの考察