ブックタイトル肉腫化学療法マスタークラス

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概要

肉腫化学療法マスタークラス

Lesson 3. 肉腫化学療法の多剤併用療法を理解する112A. MAID療法の成立の過程軟部肉腫に対してダカルバジン(dacarbazine;DTIC) 1)とドキソルビシン(doxorubicin;ADR) 2)がそれぞれ単剤で有効であることが証明された.ADRとDTICとの併用療法(ADIC療法)は,単剤よりも有効であることが報告された 3).ADIC 療法にビンクリスチン(vincristine;VCR)を追加したVADIC 療法(VCR+ADR+DTIC)の有効率はADIC 療法並みであったが,CR はさらに多かった 4).このVADIC 療法にシクロホスファミド(cyclophosphamide;CPA)を加えたCYVADIC 療法(CPA+VCR+ADR+DTIC)において,56 %の有効率が報告された 4).VCR は小児悪性腫瘍にしばしば用いられる薬剤であるが,単独では成人軟部肉腫に対して無効であるとする報告があり 5),CYVADIC 療法からVCR を除いたものがCYADIC療法もしくはCAD 療法である.Blum ら 6)によれば,本法を軟部肉腫の遠隔転移例に対して用いたところ,CR 17 %,PR 39 %,NC 22 %,PD 22 %であったという.その後,軟部肉腫に対するイホスファミド(ifosfamide;IFO)の有効性が報告された 7).単剤ではIFO のほうがCPA よりも有効性が高く,CAD 療法のCPA をIFO に代えたのがMAID 療法〔メスナ(mesna)+ADR+IFO+DTIC〕である 8).メスナは抗がん剤ではなく,IFO の出血性膀胱炎の副作用軽減のために加えられたものである.B. AI 療法との比較AI 療法とMAID 療法との違いはDTIC の有無である.MAID 療法のほうがAI 療法よりも薬剤の種類が多いため,副作用の種類はMAID 療法のほうが多い.逆に,MAID療法のほうがIFO の投与量が少ないため,IFO に起因する副作用は軽い.2MAID療法(ADR+IFO+DTIC)