ブックタイトル肉腫化学療法マスタークラス

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概要

肉腫化学療法マスタークラス

Lesson 8. 症例から肉腫の転移例を理解する338症例提示 【症例】 17 歳,男性【主訴】 左大腿骨遠位部の疼痛【治療経過】 左大腿骨遠位部に疼痛を自覚し,近医でX 線画像を撮影したところ,骨腫瘍が疑われた.精査目的に紹介となり,切開生検にて骨肉腫と病理診断 ?された.CT 画像上,右肺下葉末梢に3 ヵ所の多発転移巣を認めた.シスプラチン(CDDP) ?とドキソルビシン(ADR) ?の併用療法(AP)とメトトレキサート(MTX)大量療法(HD-MTX) ?の連続2 回投与を組み合わせた多剤併用化学療法(MAP) ?を開始し,MAP1 コース終了後(治療開始後5 週),画像検査を実施した.新規病変の出現なく,原発巣はstable disease(SD)であり,肺転移巣は縮小傾向であったことからMAP 療法の効果は期待できると判断し同治療を継続した.MAP 1 コース追加後に局所処置として左大腿骨骨肉腫広範切除術を施行した.病理学的にはviable cell は10 %の残存 ?にとどまり,化学療法に対する反応性は良好(good responder)であった.術前化学療法と同様の3 剤を用いてCDDP,ADR,HD-MTX を組み合わせ,合計8 コース(約4ヵ月)の術後化学療法を実施した.発症時に認めた肺結節に対して術後化学療法終了後に右肺下葉楔状切除術を施行し,初発時治療を終了した.切除した肺転移巣は病理学的に悪性細胞を認めなかった.治療終了から1 年3ヵ月後,右肺中葉に結節性病変が出現 ?した.右肺中葉部分切除術を施行し,病理学的に骨肉腫の再発を確認した.術後化学療法として大量イホスファミド(ifosfamide;IFO)の投与を2 コース実施した.以降,さらに3 ヵ月後に右下葉,9 ヵ月後に左下葉に再発病変を認め,それぞれ切除術を施行し,現在外来経過観察中である.? 骨肉腫の全身病変検索にはCT,PET-CT,骨シンチグラフィなどが有用である.骨髄転移やリンパ節転移は少ない.?CDDP 使用例では腎機能障害や聴力障害の出現に注意が必要である.治療開始前に腎機能検査,聴力検査(高音域障害)を実施しておく.? ADR は蓄積毒性として心毒性が知られる.400 ~500 mg/m 2 が上限とされるが,上限未満の使用量においても心毒性が出現する症例があり,注意が必要である.定期的にモニタリングを行う.?高度のMTX 排泄遅延に対する支持療法として大量輸液やロイコボリンレスキューでは不十分な場合も多い.唯一の治療薬であるグルカルピダーゼは国内未承認薬であり,医師主導臨床試験を実施中である(2015 年2 月現在).?術前化学療法としてAP 療法と比較してMTX を上乗せしたMAP 療法の有効性を検証した試験はないものの,標準的にはMAP が用いられる.? 術前化学療法に対する効果が高い(viable cell<5 ~10%)場合では,低い(viablecell>5 ~ 10%) 場合に比較してdisease freesurvival(DFS) が良好であることが知られている.? 肺孤発性転移であっても切除可能かどうかは外科医と十分に相談が必要である.1骨 肉 腫初発時切除可能肺転移病変を有する進行例