ブックタイトル肉腫化学療法マスタークラス

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概要

肉腫化学療法マスタークラス

1 骨肉腫 初発時切除可能肺転移病変を有する進行例339治療法の選択とその根拠  骨肉腫の初発時転移例(全体の20 ~ 25 %を占める)に対する標準治療は確立していない.疼痛対策を含め緩和治療として化学療法が行われることもある.転移例の9 割は肺病変を伴う.孤発性もしくは病変が2 ~ 3 ヵ所にとどまる切除可能な肺転移例の予後は良好であることが知られ,この場合,非転移例の標準治療と同様に進められることが世界的に一般となっている 1).本例のように「新規病変の出現なく」「転移巣縮小傾向」が確認された場合は,限局病期と同様に局所療法+術後化学療法を進めることで治癒を目標とした治療が可能となる.なお,術後化学療法の選択については術前化学療法に対してgood responder であったことを根拠としたものの,poor responder であったとしても,非転移例でも薬剤変更が予後改善につながる可能性は担保されておらず,特に転移例ではその後の再発リスクが高いことから,有効な薬剤を早期に消費することは慎重に検討 ?すべきである.骨肉腫の再発例に対する治療戦略として,可能な限り外科的切除を行う 2 ~ 4).完全切除できた場合にのみ,治癒が期待できる.初回再発においては再発病変の完全切除が得られるかどうかが最も重要な予後因子であり,完全切除できた場合の5 年生存率は20 ~ 45 %と言われる.再発症例における術後化学療法の意義は十分に確立していない.IFO の単独投与 ?またはエトポシド(VP-16)との併用療法(IE 療法)は一部の再発症例に有効であることが知られている 5,6).本症例においては,初回再発時治療として,再発巣の完全切除後に大量IFO の投与を行った.治療効果とその評価  本症例において,初回肺転移に対する術後の化学療法(大量IFO 投与)の有効性は示されなかった.肺転移を反復しているが,多発病変や他部位への遠隔転移を伴わず,孤発性のため完全切除が可能であり,外科的治療のみでコントロール 10できている.?セカンドライン,サードライン治療においては患者のQOL を重視し生活のスタイルに合わせてレジメンを検討すべきである.  病変の増大があっても無症状の場合には無治療経過観察の選択肢も検討しうる.?大量IFO投与においては,出血性膀胱炎,脳症,尿細管障害などに注意が必要である.また,晩期合併症として不妊のリスクがある.治療開始前に妊孕性温存が可能であれば検討する.10再発を反復する症例では,先行する化学療法(CDDPやIFO など)により腎尿細管障害を伴うことも少なくない.有効な化学療法の選択肢は少なく治療に難渋する.手術のみでコントロールできない場合の全身治療として,今後は分子標的治療薬の開発なども期待される.