ブックタイトルがん患者の輸液・栄養療法
- ページ
- 11/14
このページは がん患者の輸液・栄養療法 の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは がん患者の輸液・栄養療法 の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
がん患者の輸液・栄養療法
1 侵襲に伴う代謝変動と栄養管理性が認められている.一方,消化管毒性がきわめて高度に出現する強力な化学療法には,経腸栄養の有用性はみられない4).3 栄養素の投与量(必要量)加わった侵襲の程度や種類によって,投与すべき栄養の組成や量が異なる.侵襲が加わっている状態で,各々の栄養素がどの程度利用されているか,必要とされているかを推測するのが望ましい.なお,必ずしも消費されている量と同量の栄養素を投与できるとは限らない.また,内因性の供給を勘案すると,投与する必要もない.a グルコースの必要量と投与量グルコースの最大の消費臓器は脳であり,平常時は100g/ 日のグルコースを完全燃焼している.これはヒトの生体が1日に消費する基礎的なグルコース量の60%に当たる5).侵襲が加わっていても安静にしている状態では,生体のグルコース消費量は日常生活を送る場合よりもむしろ減少していると推測される.入院患者のグルコース投与量は女性で180 ~ 200g/日,男性で230 ~ 250g/日を基本に考える.なお,鎮静薬を使用している場合には脳のグルコース消費が減少するため,消費量の推定からはその分を差し引く.内因性のグルコース供給,すなわち糖新生の速度は侵襲の程度によってさまざまである.敗血症性ショックの場合,糖新生は3mg/kg/分と,生体の要求量をほぼ満たす速度に達する.したがって,グルコースの投与量は侵襲の程度を考慮して消費量よりも少なく設定する6).b アミノ酸(蛋白質)の投与量アミノ酸は,いわゆるストレス係数と同じ値(g/kg/ 日)を基本とし,病態を勘案して適宜増減する.高齢者は,若年者と比較してより多い蛋白質を必要とする.そのため,高齢者に対するアミノNICE-SUGAR 研究から学ぶICU入室患者に対する,血糖を80 ~ 110mg/dLに保つ強力インスリン療法(IIT)の有用性を検証したLeuven 試験はつとに有名である7).また,その後にIIT を否定したNICE-SUGAR研究も広く知られている8).あまり指摘されてはいないが,この2 つの試験を報告した論文には興味深い結果が示されている.Lueven試験ではICU入室当日に200 ~ 300gのグルコースが,翌日からは20 ~ 30kcal/日の非蛋白カロリーと0.8 ~ 1.6g/kg/ 日のアミノ酸が投与されている.一方,NICE-SUGAR 研究で投与されている総エネルギー量は,入室後14日間の平均でどちらの血糖管理法においても約11kcal/kg/ 日であった.Leuven 試験の不良な成績は,このように過剰なエネルギー投与にあった可能性もある.また,重症症例に対する栄養管理で実際に投与できる栄養量をNICE-SUGAR研究が示しているとも考えられる.107