ブックタイトルがん患者の輸液・栄養療法
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がん患者の輸液・栄養療法
酸の投与量はストレス系数に1.2を乗じた値を基本とする.投与するアミノ酸(蛋白質)の量を増加させた場合,BUN値の上昇を認めることがある.何らかの理由で腎機能が低下している場合,これは当然の現象である.なお,侵襲期の栄養管理では,BUNを低下させることが目標ではない.創傷治癒や臓器の再生などの治療目的を達成するため,ある程度までのBUNの上昇は容認されるべきである.c 脂質(中性脂肪)の投与量脂質は1g/kg/ 日程度を投与してまったく問題はない.安静時の骨格筋や心筋の燃料は脂肪酸である5).また,shivering時に消費される燃料も,主として脂肪である9).さらに前述したように,アドレナリン優位なホルモン環境では中性脂肪の利用が促進される.d 微量栄養素微量元素とビタミンについては,侵襲下であっても1日推奨投与量(RDA)の100%を投与する.市販されている総合ビタミン製剤や微量元素製剤を用いても過剰症をきたす可能性はない.経腸栄養剤には,長期に用いた場合に微量元素欠乏をきたす可能性を有するものがある.しかし,数ヵ月までの使用であったら通常問題はない.e 投与量のモニタリングと異常への対応Counter-regulatory hormoneは血糖値を上昇させる.しかし,糖尿病でない患者に尿糖が出現するほどの高血糖がみられた場合,まず考えるべきであるのはグルコースの過剰投与である.特に,市販の高カロリー輸液用基本液を使用した中心静脈栄養施行時には注意が必要である.グルコースの投与量過剰が引き起こした高血糖には,その投与速度(投与量)を減ずることで対処する.本体の投与速度を調節することで,グルコースの投与量を連続変数的に変えることが可能である脂質の利用障害は血中の中性脂肪(TG)濃度に反映される.静脈栄養の場合には脂肪乳剤の投与速度は0.1g/kg/ 時とするが,血清TG値が300m/dL以上の場合には0.05g /kg/ 時に減速する.さらに400mg/dL以上の場合には脂肪乳剤の投与を中止する.症 例栄養処方の実際患者は中等度の侵襲が加わって第2病日となった70代の男性.糖尿病の既往はない.体重60kg,身長170cm.尿量は50mL/時.初期の投与量はグルコース100 ~ 120g/日,蛋白質(アミノ酸)30 ~ 50g/日,脂質15 ~ 30g/日に設定する.市販の高濃度流動食(半消化態栄養剤)を800 ~ 900kcal 使用すると,この範囲内の栄養が投与される.この時期は消化管を利用することに意義があるので,消費エネルギー量に相当する栄養を補うことに固執しない.これに加えて静脈内には薬剤投与に伴う生理食塩水や細胞外液補充液などが投与される.108