ブックタイトル外来化学療法室 がん薬物療法カンファレンス

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概要

外来化学療法室 がん薬物療法カンファレンス

9519 肥 満肥満だけでは抗がん薬を減量する理由にはならない 殺細胞性抗がん薬の投与量を体表面積当たりで計算する場合,肥満患者ではその絶対量が大きくなる.そのため,副作用のリスクが高くなるという懸念から,身長から計算した標準体重を用いるという考え方がある.しかし,実際の体重を用いて投与量を計算しても肥満患者で副作用が強くなることはなく,むしろ曖昧な減量によって過少治療となるリスクが生じる.したがって,投与量を増やすことにより最大効果を期待する殺細胞性抗がん薬の治療では,肥満だけでは減量の理由にはならない1).このことは,化学療法高感受性のがんを対象とする化学療法や治癒を目指す術後補助化学療法では特に重要であり,肥満であっても実際の体重をそのまま用いて投与量を計算するべきである.乳がん術後補助化学療法の臨床試験の後ろ向き解析によると,抗がん薬を減量された肥満患者(BMI ≧ 30)では無病生存割合および全生存割合が低かった(表2 - 28)2).一方,症状緩和や延命を目的とする場合では個々の患者で病態や臨床背景に配慮しながら慎重に判断するべきである. 浮腫や胸腹水による体重増加では,増加する前の体重を用いて投与量を決定することがあるが,それが適切であるという科学的な根拠はない.薬物動態学的な視点からは,抗がん薬がサードスペースに滞留してその排泄が遅延するために副作用が増強する可能性があるため,ある程度の減量は合理的である.胸水や腹水が大量の場合には,そもそも化学療法の適応について慎重に検討して,減量の必要性も含めて個々の患者で総合的に判断する. 体重は,化学療法開始時だけではなく治療中も定期的(例えば3 ヵ月間隔)に測定する.体重変動が激しい場合には測定頻度を増やすなどの慎重さが必要である.腎機能をコッククロフト式やeGFR 推算式によって推算する場合には,血清クレアチニン値が筋肉量の影響を受けるため,これらの推算式に用いる検査値は体重が安定した状態であることを前提にしてPOINTBMI 抗がん薬の投与量n抗がん薬を減量された患者の割合無病生存割合(10年間) 全生存割合割 合(%)(SD)ハザード比[95%CI] P割 合(%)(SD)ハザード比[95%CI] P≧30(肥満)≧85% 4945%49(7) 0.55[0.33-0.93] 0.026157(7) 0.50[0.28-0.88] 0.0158<85%(減量) 40 28(7) 38(8)25~29.9≧85% 17919%52(4) 0.67[0.43-1.03] 0.067662(4) 0.75[0.46-1.22] 0.2440<85%(減量) 41 35(8) 52(8)<25≧85% 36814%48(3) 0.75[0.54-1.05] 0.096660(3) 0.84[0.57-1.24] 0.3702<85%(減量) 62 41(6) 58(6)全 体≧85% 59619%49(2) 0.68[0.54-0.86] 0.001360(2) 0.72[0.56-0.94] 0.0142<85%(減量) 143 36(4) 50(4)表2-28 BMIによる抗がん薬投与量の違いと無病生存割合,全生存割合の関係SD:標準偏差(standard deviation),CI:信頼区間(confidence interval)ホルモン受容体陰性の閉経前女性に対する乳がん術後補助化学療法(CMF療法)の後ろ向き解析によると,肥満患者では抗がん薬を減量される割合が高く,10年間の無病生存割合および全生存割合は減量しない場合や非肥満患者と比べて低かった.(文献2より引用,一部改変)