ブックタイトル乳癌診療のための分子病理エッセンシャル

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概要

乳癌診療のための分子病理エッセンシャル

52  Part Ⅰ.乳癌のサブタイプの理解につながる基本知識シグナルが乳癌幹細胞の維持機構に関与していると報告されている 8).3 heterogeneityの必要性heterogeneity は,治療側に立つと治療を複雑困難にしている厄介なものであるが,腫瘍細胞の側に立ってみれば,腫瘍が生存していくための重要な戦略としてとらえることができる.腫瘍と周囲間質を含めた微小環境は相互に作用していることは知られている.腫瘍細胞が形成するクローン間にも相互作用(助け合い)があり,全体として腫瘍増殖に優位に作用している可能性もある.液性因子を放出するクローンとそれを受けるクローンの両者が生存のために必要であり,それを理由として腫瘍内heterogeneity が維持されているという報告もある 9).研究に用いられる培養細胞株は,1個の細胞に由来するクローナルな細胞集団として考えられているが,乳癌細胞株をCD24とCD44でソーティングを行うとCD44 +CD24 ?/lowを示す乳癌幹細胞性格を有する細胞分画が得られるという報告もある.大きな集団となるためには多様性が不可欠であるのかもしれない 10).2. 原発巣と転移巣におけるheterogeneityheterogeneityを有する腫瘍細胞集団である原発巣が,他臓器に転移する際にはどのような細胞が転移するのだろうか.原発巣と肝転移巣での腫瘍細胞を比較した検討では,乳癌では腫瘍細胞がランダムに転移を起こすのではなく,原発巣内の特定の1 つのクローンが肝転多分化能癌幹細胞 自己複製腫瘍形成heterogeneity図B-4-2a  癌幹細胞によるheterogeneity自己複製した癌幹細胞とポリクローナルな分化細胞によって,heterogeneityを有する腫瘍が形成されている.現在の治療癌幹細胞を標的とした治療抗癌薬放射線分子標的薬癌幹細胞癌幹細胞分化した細胞二次治療ターゲット治療微小残存病変再発病変図B-4-2b  現行治療および癌幹細胞をターゲットとした治療のモデル図治療によって抵抗性を有する細胞が残り,構成する細胞集団に変化が生じる.現在の治療では,癌幹細胞が残存すると考えられる.癌幹細胞をターゲットとし,分化した腫瘍細胞を二次治療で消滅させることで,腫瘍細胞の壊滅・根治を目的とする.