ブックタイトル乳癌診療のための分子病理エッセンシャル

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概要

乳癌診療のための分子病理エッセンシャル

  65C 乳癌の組織型・組織像とその分子病理学的背景乳癌の組織型分類,組織学的grade分類(または核grade分類)は個々の乳癌の生物学的特性,患者予後と密接に関連していることが知られるが,観察者間の再現性が低いことがある.近年の分子生物学,分子遺伝学の成果を応用し,このような病理組織診断を補完し,より客観的,定量的,かつ治療標的分子の状態も組み入れた乳癌症例の総合的な生物学的特性の情報を得るツールとして,網羅的分子解析による遺伝子発現や遺伝子変異,ゲノムコピー数変化のプロファイルによる分類が考案され,診断応用に向けて改良されてきた.2000年には癌組織のmRNAを対象に,DNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現プロファイルの網羅的解析手法が確立された.この手法により乳癌症例が5つの内因性サブタイプ(intrinsic subtype)に分類されることが示された.1990年代に開発された比較ゲノムハイブリダイゼーション(comparative genome hybridization:CGH)法は,個々の癌症例に特徴的な染色体領域のゲノムコピー数増減パターンを知る方法であり,近年は高精度,高密度,高情報化したアレイCGH 解析に進化している.また次世代のゲノムあるいはexon のシーケンス法開発により全ゲノム・遺伝子の変異を調べることも可能となった.本項では乳癌の組織型,gradeと遺伝子発現,ゲノム構造変化のプロファイルとの関連性について記述してみたい.1. 組織型分類とgrade分類乳癌の組織型は光学顕微鏡観察によって認識される組織構築のパターンによる分類であ乳癌の各組織型およびgradeに2 特徴的にみられる分子変化おさえておきたいP O I N T● 乳癌の組織型と遺伝子発現,ゲノム変化は密接に関連する.● 浸潤性乳管癌,非浸潤性乳管癌(DCIS)では,grade とサブタイプの関連が強く,低?中grade はluminal 型が大多数,高grade はluminal,HER2 陽性,basal-like などが混在する.高grade DCIS は大多数がHER2 陽性型であり,basal-likeは少ない.● 特殊型では,ほぼ単一サブタイプを示す型が多く,大多数がluminalからなる組織型の他に,basallike型のみ,あるいはbasal-likeとclaudin-lowの混合からなる組織型がある.● 乳癌に多い遺伝子変異であるTP53,PIK3CA,CDH1の変異も,特定の組織型,gradeで高頻度にみられる傾向がある.BRCA1生殖系列変異関連乳癌にも形態的特徴がある.● ゲノムコピー数変化のパターンはサブタイプと対応し,1q増多/16q 欠失はluminal A,狭い領域の遺伝子増幅が散見されるパターンはluminal B, HER2 陽性型,全ゲノムの複雑な増多と欠失のパターンはbasal-like,に各々特徴的である.