ブックタイトル乳癌診療のための分子病理エッセンシャル
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乳癌診療のための分子病理エッセンシャル
130 E 乳癌のサブタイプ分類2000 年にPerou ら 1)により,cDNAマイクロアレイを用いた解析で,乳癌には少なくとも4 つ以上〔luminal, HER2-enriched, basal-like, normal breast-like〕の内因性サブタイプ(intrinsic subtype)が存在することが報告された.2007 年にはこれらに加えclaudin-low 型が存在することが示されている 2()?p.120?124).当初の解析では凍結組織をマイクロアレイ法で解析していたが,広く臨床応用するためには,コストや検査の汎用性の問題があった.これを解決するために,内因性サブタイプを簡便に分類するための改良がなされてきた.1 つは遺伝子発現プロファイルを用いてこのマイクロアレイの結果を予測するものである.代表的なものはquantitative(q)RT-PCR 法で行うPAM50 3)であり,パラフィン包埋切片からも検討可能である.現在,Prosigna R として,商業ベースで測定可能である.また,PAM50 や開発時のcDNA マイクロアレイによる内因性サブタイプは,singlesample predictors で分類されていたが,より検討遺伝子数の少ないsubtype classificationmodelsを用いたThree-Gene Model〔エストロゲン受容体(ER), HER2, aurora kinase A〕なども開発された.これら2 つのサブタイプ検討方法の比較検討 4)では,予後予測能は同等であるが,術前化学療法の病理学的完全奏効 pathological complete response(pCR)を指標とした効果予測能および主な生物学的多様性の把握などの点ではPAM50が優れることが示されており,現在ではPAM50が主流である.もう1つは,さらに安価で簡便で汎用性のある免疫組織化学(immunohistochemistry:IHC)法による分類である.本項では,前半は内因性サブタイプ別の分子病理学的および病理学的特徴について述べ,後半で遺伝子発現プロファイルに基づく内因性サブタイプと,通常用いられるIHC 法〔ER,プロゲステロン受容体(PgR), HER2など〕に基づく分類との比較について述べる.luminalAやluminal Bなどサブタイプの表記に関する混乱をさけるため,本項ではPAM50などの内因性サブタイプの特徴と臨床的サブ2 タイプ(IHC法によるサブタイプ)との関係おさえておきたいP O I N T● 内因性サブタイプ(intrinsic subtype)は,腫瘍のもつ表現型をもとに分類されたものである.一方,IHC法によるサブタイプは,内分泌療法および抗HER2療法の適応に基づく分類であり,両者のコンセプトは異なっている.また両者の一致率は中等度であり,不一致があることを認識する必要がある.● 現在の内因性サブタイプの位置付けは,IHC 法によるサブタイプをrefine し,予後予測や治療効果予測の精度を高くする.● 内因性サブタイプに基づく治療選択が,現行のIHC 法に基づく治療選択よりも予後を改善できるかどうかは今後の課題である.