ブックタイトル乳癌診療のための分子病理エッセンシャル
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乳癌診療のための分子病理エッセンシャル
131E.乳癌のサブタイプ分類遺伝子発現プロファイルに基づく分類をluminal A などと表記し,IHC 法によるサブタイプ分類によるluminal A-likeはIHC-luminal Aなどで表記する.1. 内因性サブタイプの特徴(分子生物学的および臨床病理学的特徴)(表E-2-1,2)1 luminal A, Bluminal 型は全体の60?70%を占め,ほとんどはER 陽性である.現在では大きく2 つにAとB に亜分類され,その比率はおよそ2対1 である.この2 つのサブタイプはmRNA および蛋白発現レベルにおいて,増殖および細胞周期関連経路とERシグナル経路の2つの点で大きく異なる.luminal BはAに比して,増殖および細胞周期関連因子(MKi67やAURKAなど)の発現が高く,ERシグナル関連因子(PGRやFOXA1)の発現が低い.しかしながら,ERαやESR1発現レベルは両者とも同等である 5).また,抗アポトーシス関連因子,EGFR関連因子やPI3K シグナル関連因子もluminal B 型で高いことが報告されている.DNA においては,luminal Aは全体に遺伝子変異,メチル化やコピー数の変化が少なく2倍体を呈するものが多く,遺伝子不安定性が低い.一方,luminal Bでは遺伝子変異,メチル化,コピー数の変化が多く異性体を呈し, 遺伝子不安定性が高い. 遺伝子変異についてはPIK3CA やMAP3K1 などではluminal B に比し,luminal A で多い.一方,TP53 変異はluminal B 型で多い(?p.35, 43, 45?46).臨床病理学的特徴は,上記の生物学的特徴を受けて,luminal BはAに比較し,診断時年齢が低く,分化度が低い(組織gradeが高い)また,初発診断時のstage は進行しているもの比率が高い 6).また,術後薬物療法未施行例および術後tamoxifen 施行例の両者においてluminal B はluminal A よりも予後不良である 3, 7).化学療法に対する反応性はluminal B のほうが高い.2 HER2-enrichedHER2-enriched はmRNA および蛋白発現では,HER2 関連因子(ERBB2 やGRB7)や増殖関連因子が高発現しており,ER シグナル関連因子の発現も中等度認められるがbasal 関連因子は低発現である 5).DNA では,全ゲノムを通じて遺伝子変異の頻度が高く(TP53 変異 75%,PIK3CA変異 43%),遺伝子不安定性も有する.71%でERBB2増幅を認めるが,DNA全体のコピー数の変化はbasal-likeよりも少ない.臨床病理学的特徴としてはluminalA に比較し,診断時年齢が若く,分化度が低い(組織grade が高い),また,初発診断時のstage は進行しているもの比率が高い 6).化学療法に対する反応性はサブタイプ中最も高い.3 basal-likebasal-likeはRNA および蛋白発現では,増殖関連因子が極めて高発現であり,基底層に発現するケラチン(CK5, 14, 7)が高発現している.HER2 関連因子発現は中等度であり,ER シグナル関連因子の発現は極めて低い 5).DNAでは,全ゲノムを通じて遺伝子変異の頻度がHER2-enriched に次いで高く(TP53 変異 84%,PIK3CA 変異 7%),コピー数変化が多く