ブックタイトル妊娠期がん診療ガイドブック

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概要

妊娠期がん診療ガイドブック

1141 疫 学わが国における妊娠中のがん罹患率に関するデータはない.海外からの報告では1, 000?1, 500妊婦に1人の割合でがんが罹患しているといわれている 1, 2).妊娠期がんの割合は1960 年代の報告では2, 000 人に1 人と報告されており,徐々に増加傾向であるとされている 3).その原因は,がん自体の発症率が増えてきているだけでなく,女性の社会進出や生殖補助医療の発展などを背景として30?40 代で妊娠・出産をする女性の数が増えてきていることも影響していると考えられている 4).妊娠中に見つかるがんとして多いものは,乳癌,血液がん(リンパ腫,白血病),子宮頸癌,甲状腺癌,大腸癌,卵巣癌,悪性黒色腫などがあげられる.その中で多く報告されているのが,妊娠期乳癌で,頻度としては3, 000妊婦に1人といわれている.妊娠期乳癌の予後は,年齢や病期を調整した非妊娠期乳癌と比べ多変量解析では差がないことがわかっている 5).2 診 断症 状妊娠期乳癌の典型的な症状やサインはない.妊娠期に乳房のしこりや皮膚の変化を感じても,妊娠症状の一つとして認識されることが多く,結果,乳癌の診断が遅れることもある.そのため,妊娠中であってもしこりや乳房の変化があれば,乳腺専門機関を受診するのが望ましい.組織診断妊娠中に増大する良性腫瘍の一つとして線維腺腫が有名ではあるが,増大傾向がある場合は針生検を用いた確定診断が推奨される.1ヵ月の診断の遅れは乳癌の腋窩リンパ節転移のリスクを0. 8?1. 8%増加させるといわれており,細胞診よりも針生検での確定診断のほうが正診率が高い.妊娠中であることを理由に組織生検をためらう必要はない.1 妊娠期乳癌