ブックタイトル妊娠期がん診療ガイドブック

ページ
5/8

このページは 妊娠期がん診療ガイドブック の電子ブックに掲載されている5ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

妊娠期がん診療ガイドブック

1151 ● 妊娠期乳癌画像診断乳癌が疑われる症例に対しては微小石灰化の広がりなど,超音波では検出できない病変を指摘できる可能性があるため,両側マンモグラフィの撮影を勧める.妊娠中のマンモグラフィ撮影は腹部遮蔽を行えば胎児への被曝は極めて低く3 Gy以下といわれている.乳房超音波を用いた精査は被曝のリスクを考えることなく安全に行える.妊娠中の乳房MRI 撮影の安全性に関する正確なデータはなく,必要性が乏しい場合は避けるほうが望ましい.少なくともガドリニウム造影剤は胎盤通過性があり,催奇形性のリスクがあることが動物実験からわかっており,妊娠中の使用に関しては慎重に行うべきである.遠隔転移の評価に関しては基本的には非妊娠期乳癌と同様に,進行期症例のみで実施するべきである.その際のモダリティとしては基本的には超音波を用い,必要に応じて,MRI での評価も考慮する.不必要な検査あるいは正確性に欠ける画像検査は避けるべきである.病理学的特徴妊娠期乳癌と非妊娠期の若年性乳癌とでは,病理学的・組織学的特徴に大きな差はなく,ホルモン陰性かつ組織学的異型度が高いものが多い 6).妊娠期乳癌の生物学的特徴を遺伝子発現レベルで検証した報告によると,妊娠期乳癌ではIGFR(insulin-like growthfactor 1),GPC(G protein-coupled)レセプター,セロトニンレセプターの発現が非妊娠期癌と比べ有意に高いという報告がある.また,PD-1(programmed cell death 1)の発現も高いという報告もある 7).しかしながら,これらの生物学的特徴に関しては不確かな部分も多く,妊娠期乳癌の生物学的特徴,組織学的特徴については検証が必要である.3 治 療妊娠中のがん治療の原則は,胎児への不利益を最小限にしながら,母親に対し最善のがん治療を行うことである.がん治療と妊娠継続の両立に関しては,病期の広がりや,推奨される治療内容,診断時の妊娠週数によるところが大きい(p.47「妊娠期がん診療の原則」を参照).局所治療? 外科治療● 時 期妊娠中期(妊娠12 週1 日?27 週6 日)の外科治療については安全性がほぼ確立されている.その時期であれば,子宮の大きさもさほど大きくなく,外科手技の妨げにならない.したがって,外科的治療が患者にとって最適な診断または治療とされる場合は,妊娠中であっても積極的に行うべきである.よほどの理由がない限りは,妊娠中だからといって手術のタイミングを遅らせるべきではない.一方で,妊娠初期(妊娠12 週未満)の