ブックタイトル症例に学ぶ がんの漢方サポート
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症例に学ぶ がんの漢方サポート
65第2章 がん患者の漢方サポートファイル治療経過第2 診 ? X年11/6 服薬開始後3 日目から身体が温まり,体調がよくなった.声がとても出しやすくなった.気持ちが前向きになり,積極的になってきた.皮膚のかゆみがなくなり,熟睡できるようになった.第5 診 ? X+1年1/26 X+ 1 年1 / 13, 電話で「仕事中に胸がドキドキし,脈がとぶようになり,デパスRをのんで会社の医務室で休んでいた」と連絡があったため.補中益気湯の服用を中止するよう指示した.再度受診後,補中益気湯から以前の柴胡桂枝乾姜湯に戻し,以後動悸することはなくなった.第4 診 ? X+1年1/8 冷えは著明に改善した.早朝に体熱感があり,疲れやすい.1 日数回の排便のうち,1 回は下痢.証が変ったと考えて,柴胡桂枝乾姜湯を補中益気湯に変更した.第3 診 ? X年12/4 気分はよい.耳鳴は不変.かゆみなし.声帯がよく動くようになった気がする.第1 診 ? X年10/16● 同処方● 同処方● 同処方● 同処方 病歴では抑うつや不眠などメンタルな問題のある患者であり,典型的な柴胡桂枝乾姜湯証の腹候を呈し,桂枝茯苓丸証と牛車腎気丸証を伴っていた.● マイスリーR 10mg● 柴胡桂枝乾姜湯 1包● 桂枝茯苓丸 1包 ×3回 毎食前● 牛車腎気丸 2包 ×1回 眠前● 同処方● 補中益気湯 1包● 桂枝茯苓丸 1包 ×3回 毎食前● 牛車腎気丸 2包 ×1回 眠前● 同処方● 柴胡桂枝乾姜湯 1包● 桂枝茯苓丸 1包 ×3回 毎食前● 牛車腎気丸 2包 ×1回 眠前柴胡桂枝乾姜湯と補中益気湯 日常の漢方診療において,柴胡桂枝乾姜湯は柴胡桂枝湯と並び,最も頻用される漢方薬であるが,癌の診療においては使用頻度が少ない.癌患者に対して用いられる柴胡剤としては,補中益気湯が圧倒的に多い.補中益気湯と柴胡桂枝乾姜湯は,ともに不眠・不安・いらいら・抑うつなどを呈する患者に適用されるため,その鑑別は重要である. 柴胡桂枝乾姜湯証では,怒り・不満・クレームなどの感情が表出され,腹候では「臍上・心下・臍下の悸」が著明で,心下痞?はなく,ごく軽度の胸脇苦満(胸脇満微結)がある.一方,補中益気湯証では,感情の表出は乏しく,腹候では臍上悸は軽度で,心下痞?と右側の軽度の胸脇苦満を認める. しかし,実際には鑑別困難なことも多く,その場合にはとりあえずどちらかを投与し,患者の反応を参考にして決定するのがよい.