ブックタイトル乳癌薬物療法 改訂2版
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乳癌薬物療法 改訂2版
6 遺伝子検査??乳癌組織における遺伝子検査はすでに臨床応用されており,主としてエストロゲン受容体(estrogen reseptor ; ER)陽性・HER2陰性乳癌の術後化学療法の適応決定に用いられている.いずれも複数の遺伝子の発現に基づく診断法である.1. OncotypeDXR( 米国Genomic Health社)??21遺伝子の発現解析によって,ER陽性,リンパ節転移陰性の乳癌患者の10年間の遠隔再発リスクの予測と,術後内分泌療法に術後化学療法を上乗せする効果を予測する多遺伝子アッセイである.??解析にはホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)が用いられ,FFPEからRNAを抽出してDNA分解酵素処理の後,逆転写酵素によってcDNAへ変換し,定量的TaqManRRTPCRにより各遺伝子の発現値を求める.16の癌関連遺伝子の発現を5つの標準化遺伝子の発現で相対的に正規化し,最終的に症例ごとのRS(0-100)が提示される.??NSABP B14試験(ER陽性,リンパ節転移陰性の乳癌に対して術後内分泌療法なし vs.タモキシフェン投与を比較)に参加した688症例に対する後ろ向き解析により,RS低値群(<18),RS中間値群(18-30),RS高値群(≧31)でそれぞれ術後10年間の再発率は6.8%(95%CI:4.0-9.6),14.3% (95%CI:8.3-20.3),30.5%(95%CI:23.6-37.4)と評価され,RS低値群は高値群と比較して有意に予後良好であった(P<0.001)1).??ATAC試験(閉経後でER陽性乳癌を対象に,術後タモキシフェン vs. アナストロゾール vs.両剤併用を比較)に参加した単剤群の1,231症例に対する後ろ向き解析(Trans ATAC試験)で,リンパ節転移の有無にかかわらずRSが有意な遠隔再発の予測因子となっていた(N0群:P<0.001,N+群:P=0.002)2).??NSABP B20試験(ER陽性,リンパ節転移陰性の患者に対してタモキシフェンによる術後内分泌療法 vs. 化学療法追加を比較)の後ろ向き解析により,RS高値群(RS≧31)では術後内分泌療法に化学療法(MF/CMF)を上乗せすることで,遠隔再発率の有意な改善が認められていた(相対リスク:0.26,95%CI:0.13-0.53,P<0.001)3).しかし,RS低値群(相対リスク:1.31,95%CI:0.46-3.78, P=0.61),中間値群(相対リスク:0.61,95%CI:0.24-1.59,P=0.39)では化学療法施行群と非施行群で予後に差は認められなかった.??またリンパ節転移陽性の患者に対する検証はSWOG8814試験(閉経後,ER陽性,リンパ節乳癌組織における遺伝子検査39