ブックタイトル乳癌薬物療法 改訂2版

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概要

乳癌薬物療法 改訂2版

転移陽性の患者に対してタモキシフェンによる術後内分泌療法 vs. 化学療法追加を比較)に対して行われた4).RS高値群では化学療法(CAF)を追加することで無病生存期間の有意な延長が認められていたが(HR:0.59,95%CI:0.35-1.01, P=0.033),RS中間値群(HR:0.72,95%CI:0.39-1.31, P=0.48), RS低値群(HR:1.02,95%CI:0.54-1.93, P=0.97)では差を認めなかった.??現在前向き試験として,ER陽性・HER2陰性,リンパ節転移陰性の患者を対象としたTAILORx試験(RS中間値群における化学療法の有用性を検証),同リンパ節転移陽性(n=1-3個)を対象としたRxPONDER試験(RS低値から中間値群における化学療法の有用性を検証)が進行中である.最近TAILORx試験において,1,626症例のRS低値群(RS<11)では術後内分泌療法だけで5年遠隔無再発率99.3%の良好な予後を得たことが報告された5).??海外ではNCCN, ASCO, ESMOの各ガイドラインならびにSt. Gallenコンセンサス会議でOncotypeDXRが推奨されている.NCCNのガイドラインでは,ステージⅠ,ⅡA,ⅡBあるいはT3N1M0のER陽性・HER2陰性乳癌で,腫瘍径>0.5cm,pN0およびpN1mi(2mm以下のリンパ節転移)が対象とされている.一方,Genomic Health社では,ER陽性・HER2陰性のStageⅠ,Ⅱ,Ⅲaでリンパ節転移陰性の浸潤性乳癌,あるいはリンパ節転移1 ~ 3個の閉経後の女性を対象としている6).2. MammaPrint R(オランダAgenda社)??70遺伝子の発現解析により,予後良好群(ローリスク)と予後不良群(ハイリスク)の2群に分類し,予後予測を行う多遺伝子アッセイである7).対象はER陽性,陰性を問わず,リンパ節転移0 ~ 3個,Stage I, IIの乳癌である.??解析に用いる標本は当初凍結または新鮮検体のみであったが,現在はFFPEも利用可能となっている.マイクロアレイチップを用いて1,371遺伝子の発現解析を行い,そのうちの70遺伝子の結果を用いてローリスク群とハイリスク群に分類する.??オランダ癌研究所に登録された52歳以下,腫瘍径5cm以下の乳癌患者295例(リンパ節転移陰性151例,陽性144例)を対象に検証が行われ,10年遠隔無再発率においてHR比5.1( 95%CI:2.9-9.0,P<0.001)で 有意にハイリスク群で不良であった8).また,リンパ節転移のある群においてもない群においてもローリスク群とハイリスク群に分類することが可能であった8).cT1 ~ 3N0M0の18歳から61歳の427症例に対して,MammaPrintRとAdjuvant! Onlineで予後予測を行った後,前向きに予後解析を行ったところ,Adjuvant! Onlineによって分類された2群では5年遠隔無再発率に有意差を認めなかった(低リスク群96.7%, 高リスク群 93.4%,P = 0.24)が,MammaPrintRのローリスク群,ハイリスク群における5年遠隔無再発率はそれぞれ97.0%,91.7% (P = 0.03)で2群を的確に分類できた9).また,MammaPrintRでローリスク群に分類され,Adjuvant! Onlineでハイリスク群に分類された124症例のうち94症例は化学療法を受けなかったが,5年無再発率は98.4%であった9).現在,リンパ節転移が3個以下の6,000症例に対して,前向きに予後解析を行うMINDACT試験が進行中である.40