ブックタイトル乳癌薬物療法 改訂2版

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概要

乳癌薬物療法 改訂2版

転移・再発乳癌に対する9 分子標的薬の使い方■ 分子標的治療??転移・再発乳癌に対する治療選択肢は多岐にわたる.その選択肢は従来の細胞傷害性薬剤に加え,分子標的薬との併用や単独使用などが増えてきた.治療選択には,腫瘍径(T),リンパ節転移(N),転移部位(M)や致死的病態(visceral)であるか否かに加え,腫瘍における分子生物学的情報(ホルモン受容体発現,HER2発現など)により決定される.??分子標的治療はHER2受容体などを含む,特定の経路を標的とした治療法である.PI3K/Akt/mammalian target of rapamycin(mTOR)阻害薬やPARP阻害薬などの分子標的治療も試みられている.??わが国において進行乳癌患者に使用可能な分子標的薬はトラスツズマブ,ラパチニブ,ベバシズマブ,ペルツズマブ, トラスツズマブエムタンシン(T-DM1),エベロリムスの6剤である.??TAnDEM試験:内分泌療法とトラスツズマブの併用効果を検証した第Ⅲ相試験である1).・ ホルモン受容体陽性かつ未治療のHER2陽性閉経後転移乳癌,または術後化学療法6ヵ月以上経過後の再発HER2陽性閉経後転移乳癌患者を対象にアナストロゾール単独群またはアナストロゾール/トラスツズマブ併用療法群に割付けた.プライマリーエンドポイントは無増悪生存期間(PFS)に設定された(表1).・ アナストロゾールにトラスツズマブを上乗せすることで,奏効率とPFSを有意に改善させたが,全生存期間(OS)についての有意差は示さなかった.・ Grade3/4有害事象の頻度は,トラスツズマブ併用群23%,アナストロゾール単独群5%であり,NYHA classⅡ心不全の頻度は15% vs. 1%とトラスツズマブ併用群に多くみられた.しかし,これらは可逆性であり忍容性は良好であった.??ラパチニブ/レトロゾール:内分泌療法とトラスツズマブの併用効果を検証した第Ⅲ相試験である2).ホルモン受容体陽性/HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブと内分泌療法との併用表1 TAnDEM試験(2009年)治療レジメン治療タイミングn RR(%) PFS(月) MST(月) NYHA classⅡ心不全(%)ANA+TmabANA初回10310420.3 P =0.0186.84.8 P <0.00162.428.5 P =0.32523.9151ANA:アナストロゾール,Tmab:トラスツズマブ,NYHA:New York Heart Association339