ブックタイトル処方の選択肢プラスワン!高齢者のための漢方薬
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処方の選択肢プラスワン!高齢者のための漢方薬
2? 薬(向精神薬) 浸けになっていたA さんの話 A さんは70 歳代後半の男性である.2 年前,突然の意識消失により某救急病院へ入院し,脳梗塞と診断された.1 年ほど前から被帽感(頭部の圧迫感)を訴え,近医を受診していたが,症状が改善しないためいくつかの病院を受診し,初診時までに8 種類の薬剤(内訳は,降圧薬1,抗うつ薬1,抗不安薬6)を処方されていた.数ヵ月前より,被帽感に加え,抑うつ気分,見当識障害(認知症症状と思われていた)などが出現し,初診時には,1 日中室内にこもり,日付や孫の顔も認識不能の状態であった.筆者が診察した際の本人の主訴は被帽感,家人の主訴は見当識障害であった. 被帽感と抑うつ気分の治療を目標に,ツムラ釣ちょう藤とう散さんエキス顆粒7.5 g/日を分3 にて開始した.また,見当識障害は向精神薬の副作用である過鎮静による偽認知症状態と考え,7 種類の向精神薬を1 種類ずつ徐々に減量,中止していった.向精神薬は徐々に減量する予定であったが,家人が勝手に減らしてしまったため,2 ヵ月後には釣藤散と降圧薬(ニカルジピン塩酸塩)のみにまで減量できた(なお,抗不安薬の中止による離脱症状は出現しなかった).釣藤散を開始して3 ヵ月後には,被帽感もほとんど気にならなくなり,日付や孫の顔も認識可能となった.治療後1 年以上になるが,症状の再発などはみられていない.? 思わぬ副作用に驚いたB さんの家族の話 B さんはやせ型で精気のない80 歳代前半の女性である.多年にわたり,不安症状を主訴に某病院の精神科に通院中であったが,あるときより筆者が1 高齢者漢方医学のススメ