ブックタイトル処方の選択肢プラスワン!高齢者のための漢方薬
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処方の選択肢プラスワン!高齢者のための漢方薬
31 ●高齢者漢方医学のススメ診察することとなった(筆者はこの某病院では精神科を担当していた).抗不安薬と抗うつ薬による治療がなされていたが,しきりに咽喉頭部異物感(喉のつかえ)と呼吸困難感(息苦しさ)を訴えていた.内科学的に呼吸器系には異常が認められなかった(B さんはこの主訴により何度も内科や耳鼻咽喉科の外来を訪れていた)ため,ツムラ半はん夏げ厚こう朴ぼく湯とうエキス顆粒7.5 g/日を分3 にて開始しようとして説明を始めたところ,同行の家人が「漢方薬だけはやめてくれ」という.そこで事情を聞くと,以前,感冒の際に,近医にマル1 という漢方薬(葛かっ根こん湯とうのこと)をもらって飲んだところ,興奮状態となり,幻覚(?)も出現したため,漢方薬だけは飲ませたくないという.そこで,漢方薬と一口にいっても,高齢者に用いても良いものと悪いものがあること,葛根湯は本来はB さんのような虚弱な高齢者に用いてはならないものであったのに用いたために,その副作用が現れただけであること,半夏厚朴湯はB さんのような症状をもつ患者に効果的であることなどを長時間かけて説明したところ,しぶしぶながら服用してもらえることとなった. 咽喉頭部異物感と呼吸困難感は半夏厚朴湯の服用後まもなく軽快し,漢方薬に対するB さんとその家族の誤解はなんとか解くことができた.?“病名漢方”で処方する医師たち 上記B さんのかかりつけ医は,感冒→総合感冒薬という現代西洋医学的感覚で,感冒→葛根湯と考えて葛根湯を処方したと思われる.大学病院で漢方薬を専門に処方する職についているとわかることであるが,この感覚で漢方薬を処方する医師はまことに多い.漢方医学の理論をまったく無視し,現代西洋医学的な病名に対応させて漢方薬を処方することを“病名漢方”と称するが,現代のわが国の医療現場では,この“病名漢方”に遭遇する機会がすこぶる多い. 少し例をあげただけでも,肝炎→ 小しょう柴さい胡こ湯とう,便秘→大だい黄おう甘かん草ぞう湯とう,アレル