ブックタイトルわかる!つかえる!なおせる!消化管症候への漢方薬
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わかる!つかえる!なおせる!消化管症候への漢方薬
2第1 章 漢方治療入門西洋医学からみた消化管症候胸やけ ? ? ? 胸やけとは,胸骨下部から心窩部にかけての焼けるような熱感を伴う不快感を指す.その程度は個人によりさまざまで,軽度の違和感,酸味や苦味のある水が上がってくる感じから,胸痛や背痛を伴うこともある.原因は,主には胃酸や胆汁などが食道内に逆流し,食道の粘膜が刺激されることである.その他,食道や胃の運動機能障害や器質的疾患,薬物・食物による食道刺激などがある.わが国における発生頻度は欧米に比べて少ないとされていたが,食生活の欧米化に伴う胃酸分泌の増加や高齢化が原因となり,近年では増加してきている.治療は,器質的疾患がみられる場合はそれに対する治療が第一となり,機能的な障害による場合には胃食道の逆流を抑えることを第一とする.また,薬物療法のみではなく,食事などの生活習慣の改善も重要となる.薬物療法としては,プロトンポンプ阻害薬proton pump inhibitor(PPI)やH2 受容体拮抗薬などの酸分泌抑制薬が第一選択となり,それらで効果が不十分な場合にはモサプリドやイトプリドのような消化管運動改善薬を適宜併用する.また,抗コリン薬やカルシウム拮抗薬といった筋弛緩作用のある薬剤を使用している場合は,ほかの薬剤に変更できるかを考慮する.PPI による治療に抵抗性を示す場合などでは,外科的な逆流防止手術を行うこともある.食生活の改善としては,過食や早食い,アルコールやコーヒーなどの制限といった工夫が必要となる.食欲不振 ? ? ? 食欲不振とは,食事を摂取したいという生理的な欲求が低下したり喪失したりする状況,さらには摂取できていたとしても摂れていないと感じられる状況をいう.生体は,体重を一定に保つように食事摂取量を調節するメカニズムを備えている.この構造が破綻して,体重減少をきたすことが多い.しかし,その一方で,必ずしも体重減少をきたさない場合もある.1