ブックタイトル臨床漢方小児科学

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概要

臨床漢方小児科学

第二部 小児における漢方医学の基本1001.緒 論 小児科医であれば,小児の特徴が発育と発達にあることは極めて当然のことと理解しているとしても,漢方初学者にとって,いきなり小児の特徴を漢方医学的に捉えることは困難と思われる.陰陽論,五行論などの漢方基礎理論はもちろんのこと,気・血・津液,藏府といった西洋医学と同様の文字でありながら内容が異なる漢方用語は,西洋医学とはほぼ完全に区別して理解すべきものである(西洋医学においては臓腑と表現することにする).漢方の基本的理解がない状態で,小児の漢方的特徴を説明しても,漢方医学全般と小児漢方の特徴の両者を同時に把握することはかなり大変な作業といえる.一方で,現代西洋医学をしっかり学んでいながら,その知識を漢方理解に結びつけないことも,勿体ないことであり,まさしく宝の持ち腐れである. このように,小児における漢方医学を理解するためには2つの問題があると考えられる.すなわち,古典を紐解き,また小児の特性を踏まえて伝統医学本来の意味を理解する困難性,現代西洋医学で解明された小児の特徴を漢方医学的に理解することの困難性である.以上の問題点を考慮して,小児科漢方を理解するための方向性を図3に示した.Ⅰ 小児科漢方を理解するために図3  小児科漢方を理解するための基本三角構図小児と成人を区別あるいは理解するために特徴的な点は,発育と発達である.まず,成人について漢方医学の基本を理解することが先決であろう.その際,西洋医学的理解を踏まえながらも一端取り払って,漢方医学の基本概念を把握する.次に小児では,その漢方医学の基礎をもとに小児の特徴を漢方医学的に解釈してみる.そして,さまざまな病態を経験するなかで,その基本病態を西洋医学的に明確にしてから漢方医学的病態を捉えることも重要となる.漢方医学の理論を打ち立てた時代の考え方に終始すると,現代医学の発展的理論を無視した滑稽な概念に陥る危険性がある.発育・発達西洋医学的理解漢方医学的理解生理学・病態学・病理学陰陽五行論・気血津液藏府理論成 人小児