ブックタイトル本人の意思を尊重する意思決定支援

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概要

本人の意思を尊重する意思決定支援

1.最期の場所の選択において本人・家族の意見が一致しているが, 45将来の気持ちの変化を予測対応した末期心不全患者の支援事例編希望している慣れ親しんだ家で過ごせ,楽しみとしている地域住民の訪問も継続できる.妻は通院による身体的負担がなく,S さんにいつでも付き添うことができる.医学的判断 Bp:128/78 mmHg,T:36. 8℃,P:88 回/bpm,SpO 2:96%,Hb:12. 0 g/dL,心胸比:68%,尿量:600 mL/日.腹壁から拍動性の腫瘤を触知し,腹部CT 検査で腹部大動脈左外側方向に最大74 mm に達する大動脈瘤を認めた.下腸間膜動脈の閉塞と総胆管結石もあり胆石胆嚢炎を起こしている可能性あり.腰背部と両大腿部~足背にかけて浮腫著明.肺雑音はないが両下葉,air 入り弱く,腹鳴も弱め.食事は高カロリー流動食を1 缶/日摂取している.家族の意向 妻はS さんの意向に添い,最期まで家で過ごさせてあげたいと思っているが,自分も体が悪いので家で最期までみることができるか不安に思っている.姪はS さんを家で看取ることに賛成しており,できるだけのことを手伝いたいと思っている.支援のポイント 本人は「腹部大動脈瘤が突然破裂しても,最期まで家で過ごしたい」と強く意思を表明しており,妻も姪も在宅療養には賛成していた.よって,在宅療養を継続するにあたり,妻がどのようなことに不安を感じているかを明確にし支援することであった.チームカンファランスでの意見①入院しても,腹部大動脈瘤が破裂する可能性が著しく低下するわけではなく,破裂した場合,死亡率は90%で,たとえ手術できたとしても死亡率は70% 1)であり,S さんは95 歳と超高齢で手術もできるかどうかわからない.これらを考えると入院のメリットは高いとは言い難い.S さんは「突然(大動脈瘤が)破裂しても構わない」と在宅で過ごすことを強く希望しているので,在宅療養を継続する方向で考えた方がいい.②突然死も考え,予後予測を細かく行いつつ,S さんがやっておきたいことを表出できるよう支援し,また奥さんも状況を理解し受け止めながら,S さんをケアできるよう支援することが大切.③ S さんの意向を実現するためには,奥さんが在宅療養で一番不安に感じている身体介護について,どのように支援したらいいか,奥さん以外に誰がどのような支援ができるのか明確にした方がいい.④奥さんは親しくしている人以外をあまり家に入れたがらないので,訪問で関わる人数を少なくし密に連携して信頼関係を築いた方がいい.具体的実践①に対して:在宅医はS さん夫妻が今は在宅療養を希望しているが,途中で気持ちが変わり入院を希望した場合も考え,S さんが入院していた病院に連絡し,入院の受け