ブックタイトル本人の意思を尊重する意思決定支援

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概要

本人の意思を尊重する意思決定支援

40           -「本人の意思の3 本柱」と            「 意思決定支援用紙」について- ここからは実際の事例の紹介です.本書では患者の意思決定を支援していく拠り所として,「本人の意思の3 本柱」を使用しています(図1).「本人の意思の3 本柱」とは,本人の意思を過去・現在・未来の3 つの時間軸でとらえる方法です.この時間軸が,意思決定支援の重要なポイントになります.過去: 事前の意思表示(リビング・ウィルLiving Will)はあるのか?アドバンス・ケア・プランニングAdvance Care Planning(ACP)のプロセスは開始されているのか?これらについて確認します.もし事前の意思表示がない場合には,患者・家族の人生の物語を傾聴(ライフレビュー)する中で,本人の意思を推定します.現在: 手を握り返す,うなずく,目を背ける,などの微弱なサインも見落とさず,あらゆる手段で患者の今の気持ちをキャッチします.そのためには,時間をかえ人をかえ,十分に苦痛が緩和された時に本人の意思を確認します.未来: その患者にとってのbest interest(最善の利益)は何かについて家族を交えて話し合います.具体的には,延命した場合の生活は?療養の場所は?家族の生活は?などについてじっくり話し合います.メリットデメリットを検討した上で,「○○さんがもし意思決定できるとしたら,これらの未来の選択のうち何を選択するか」について考えるのです. 認知症患者などの場合,現在の意思表示能力のみにとらわれると,意思確認はできないと思いがちですが,このように本人の意思を過去・現在・未来の時間軸で捉えると患者の意思が浮かびあがってきます.実際には,これに医学的判断と家族の意向 *などを図1 本人の意思の3本柱過去・事前の意思表示の有無 リビング・ウィル,ACP,関連する言動など・ライフレビューから本人の意思を推定現在・今の気持ちを推察 手を握り返す,うなずく,目を背けるなどの微弱なサインをキャッチ未来・本人にとっての最善の利益 延命した場合の生活は? 療養の場所は? 家族の生活は?本人の意思事例編をお読みいただくにあたって*「医学的判断」および「家族」の具体的な内容,範囲については平成19 年厚生労働省の「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」に準じる