ブックタイトル子どもが元気になる在宅ケア

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概要

子どもが元気になる在宅ケア

232 子どもの認知機能(感覚と運動)の発達と遊びた考え方です.現在は発達障害全般への適応,高齢者や精神障害者,さらには虐待などの慢性的なトラウマを受けた子どもへの治療にも応用され始めており,発展を続けています.脳の発達と感覚統合 脳は脳幹や中脳などのより下位の部分から発達し(ボトムアップ),それらが大脳皮質の働きの縁の下の力持ちになっていて,皮質で行っている人間らしい行動や認知を支えています.その支えが力強くしっかり育っていればいるほど,皮質の働きもよりスムーズになります(図1-8). 感覚統合では「感覚は脳の栄養」という言い方をします.その脳を栄養たっぷりの食べ物ですくすく育てるために,その子どもに合った食材や分量,調理の仕方や食べ方などの工夫をするのが私たち大人の役割だといえます. 感覚統合の発達は,積み木を積み上げていく様子でイメージできます(図1-9).視覚や聴覚というとても大切な感覚がうまく働くためにも,固有受容覚,前庭覚そして触覚とが互いに関連し合い影響し合って(統合)育っていくことが大事です. 子どもの発達を考えるときに,感覚と運動,認知の関係を理解しておくことはとても大切です.ここでは感覚統合を中心に話題を進めます.感覚統合とは 感覚とは,いわゆる五感(視覚,聴覚,味覚,嗅覚,触覚)をすぐに思い浮かべるでしょうが,ここではより幅広いいろいろな感覚のうちの触覚,固有受容覚,前庭覚という感覚について解説します(図1-7). 感覚統合とは,1960 年代にアメリカの作業療法士J . エアーズがもともと学習障害の子どもへのアプローチとして理論と実践を構築し,最新脳科学の知識に適応させながら発展してき2 子どもの認知機能(感覚と運動)の発達と遊び大脳皮質(言 葉)大脳辺縁系(こころの脳)脳 幹(体の脳)体各部延 髄脳 幹小 脳大脳辺縁系大 脳考える脳生命の中枢感じる脳本能・情動帯状回:やる気を起こす海 馬 :記憶のコントロール扁桃体:本能的な価値判断視 床視床下部中 脳橋延髄睡眠リズム体温や呼吸の調節ホルモンの分泌筋肉運動の調節 など図1-8 脳の3段階の働き(出典)中川信子:健診とことばの相談,p.128,ぶどう社,1998.揺れる:前庭覚つかまる:固有受容覚見 る:視 覚聞 く:聴 覚味わう:味 覚嗅 ぐ:嗅 覚触 る:触 覚五 感図1-7 五感と前庭覚,固有受容覚