ブックタイトル母乳育児支援講座 改訂2版

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概要

母乳育児支援講座 改訂2版

340低血糖って何が悪いの?産科医師がカンファレンスで「母乳だけで育てていると赤ちゃんが低血糖になると医学雑誌に書いてある.大学病院でお産をしたのに低血糖のために赤ちゃんに後遺症が残ったら大変だから,あまり母乳だけにこだわらないように」と言っていました.私たち助産師は,「母乳だけにこだわらないようにとはどういうことですか? また,どのような状況になったら,母乳のみではなく,補足を検討したらよいのですか?」と質問しましたが,「小児科の先生に聞いてみよう」と答えただけで,その後,返事がありません.低血糖によって起こる児への影響にはどのようなものがありますか? また,それを予防するために,私たちはどうしたらよいのでしょうか? 産科の先生も母乳で育てられていた赤ちゃんが低血糖になり,神経学的な症状を残したという論文をみて気にされていたのでしょう.産科の先生がご心配されているように,新生児の低血糖は児に重篤な後遺症を残す恐れがありますから,リスクのある赤ちゃんを見逃さず,血糖が安定するまでフォローし,低血糖の発症を予防することは大切です.だからといって「すべての赤ちゃんに人工乳を与え,低血糖を予防したほうが安全」ということになっては,母乳育児のスムーズなスタートを阻害してしまいます.健康な正期産児の血糖値が,生後どのように変化するのか,そしてどのような赤ちゃんに低血糖が起こりやすいのかをしっかり理解して,どのような場合に医療の介入が必要なのかを把握しておくことがカギです.次ページに「低血糖リスクチェックリスト(出生~退院時までの)」を示しました.これらの項目のどれか1つでもあてはまるのであれば,低血糖のリスクありと判断し,血糖を検査し,介入の有無を判断する必要があります.しかし,これらの項目に該当しない健康な正期産児は,母親が赤ちゃんの要求に合わせて頻繁に授乳していれば,低血糖になるリスクは極めて低いと考えられています.いずれの場合も,一見母乳を飲んでいるように見えても上手に飲みとっていないと,低血糖のリスクとなります.スタッフは,すべての母親と赤ちゃんの経過を観察しながら,授乳の様子をアセスメントすることが,低血糖の予防のために大切です.早期接触のところでも触れていますが,肌と肌の触れあいが大事なのは,産後すぐだけの話ではありません.病室でも退院後でも素肌で抱っこしていると,赤ちゃんは安心して,不必要に泣くことは減ります.また,肌の接触によって体温も安定するため,エネルギーの消耗も減ります.関連学習:第8日目 新生児の低血糖─ 母乳で育っている児を中心に