ブックタイトル子どものアレルギー×母乳育児×スキンケア
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子どものアレルギー×母乳育児×スキンケア
63母乳育児の重要性ら取り入れる(母乳を介して)ことは生後早期の局所,そして,全身の免疫応答に影響を与えると考えられています. アトピー性皮膚炎を発症した子どもの母親の母乳では,可溶性CD14 濃度が低値であるという報告もあります4).その後の研究で母乳中の可溶性CD14 は母親自身にアレルギー疾患があると高値となることが報告され5),最近のハイリスクの母親を対象とした研究では母乳中の可溶性CD14(産後7 日と28 日)は乳児期の湿疹やアトピー性皮膚炎とは関係がないという結果が示されています6).分泌型IgA 抗体 分泌型IgA 抗体は,食物に対してアレルギーが起こりやすくなるかどうかを決める1 つの因子です.新生児の血液中にはごくわずかのIgA 抗体産生形質芽球しか存在しません.いろいろな微生物が子どもの腸管にある腸管関連リンパ組織(GALT)を刺激する結果,生後1 ヵ月になるとIgA 抗体産生形質芽球が100 倍近くに増加します(腸内に細菌がまったくいないとIgA 抗体を産生する形質細胞は増加しません).しかし,IgA 抗体産生細胞の発達が遅れる,または,腸管表面バリアにおいて分泌型IgA 依存性の作用が不十分であると,アレルギー反応が起こりやすくなります. 少なくとも生後4 ヵ月まで母乳で育てることはアトピー素因をもつ家系でももたない家系でも子どもをアレルギーから守る効果はある程度指摘されています.さらにIgE 感作と食物アレルギーを避けるために,栄養的に適切で,安全な離乳食(補完食)を5 ?6 ヵ月頃から与えながら,少なくとも生後6 ヵ月間は母乳を与えることが望ましいでしょう7,8). 一方で,母乳中の分泌型IgA 抗体濃度が高いと2 歳までの子どものアトピー性皮膚炎罹患が減少するというバースコホート研究もあります3).また,母乳から摂取した総IgA抗体量が多いほど2 歳までの子どものアトピー性皮膚炎罹患が減少したということも示されています9). 母親から母乳を介して分泌型IgA抗体をもらうことで,未熟な消化管粘膜を成熟させて,防御機能も高まります.さらに,母乳にはたくさんの免疫細胞,サイトカイン,そして成長:母乳に含まれる免疫調節作用をもつ成分濃度を増やすことはできるのでしょうか? 1つの研究報告をみてみましょう.Colladoらは母親の栄養状況,免疫学的な状態,ライフスタイル,食事内容が母乳成分に与える影響について検討しています10).母乳は産後1ヵ月と6ヵ月に採取し,TGF-β2,可溶性CD14,サイトカイン,そして腸内細菌叢を調べました.その結果,過体重の女性の母乳中TGF-β2,可溶性CD14 濃度は標準体重の女性の母乳よりも低いことがわかりました.また,過体重の女性では,標準体重の女性に比べて,母乳中にブドウ球菌が多く,Bifidobacteriaが少ないという結果も示されています.また,妊娠中からプロバイオティクスとプレバイオティクスを摂取することで母乳中の分泌型IgA 抗体,TGF-βが増加する可能性もあります11).妊娠前から自分の健康に注意して体重,食事管理を行えることが望まれます.