ブックタイトル基礎栄養学 改訂9版

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概要

基礎栄養学 改訂9版

 日本人に必要な栄養量の設定についてこれまでの流れをみると,昭和 15(1940)年に栄養研究所の創設者佐伯博士が日本人国民栄養基準について著作『栄養』のなかで発表している.昭和 16 年には厚生科学研究所国民栄養部が算定に当たり,日本人平均 1 人 1 日栄養要求量標準を作成している.その後,政府機関である日本学術振興会が国民の栄養基準,調査研究動員本部から戦時最低栄養要求量などが発表されている. 第二次大戦後の策定作業は,経済安定本部の国民食料及び栄養対策審議会,資源調査会食料部会などが行っており,その後総理府資源調査,次いで科学技術庁資源調査会を経て,昭和 44年より厚生省所管になっている.そして 5 年ごとの見直しがなされ,改定されてきた.昭和45 年に発表された日本人の栄養所要量を基にすると今回の改定は 9 次改定となる.第 6 次改定までは栄養所要量という言葉が使われていたが,第 6 次改定から確率論による考え方が導入され,第 6 次改定 日本人の栄養所要量―日本人の食事摂取基準―とされた.第 7 次改定より日本人の食事摂取基準(2005 年版)となり,次いで日本人の食事摂取基準(2010 年版),(2015年版)が刊行された. 日本人は昭和 30 年位まで長い間栄養素の欠乏症に悩まされてきた.そのためこの対策に力が入れられてきた.しかし,昭和 30 年以降は高度経済成長に伴い,生活の変化が複雑になり,栄養素の不足と過剰者が存在し,さらに高齢社会の到来で,健康の維持と増進に対する栄養素の摂取については個々に適した対応が必要になっている. a.概 要 「日本人の食事摂取基準」は,健康増進法(平成 14 年,法律第 103 号)第 30 条の 2 に基づき厚生労働大臣が定めるもので,国民の健康の保持・増進,生活習慣病予防のために摂取することが望ましいエネルギーおよび各栄養素の摂取量の基準を示すものである.「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」では,高齢化の進展や糖尿病等有病者数の増加を踏まえ,また,健康日本 21(第 2 次)も考慮し,健康の保持・増進とともに生活習慣病の予防と重症化予防にも踏み込んだものとなっている. 「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」では,たんぱく質,脂質,炭水化物,食物繊維,ビタミン A・D・E・K・B1・B2・ナイアシン・C など 13 種類のビタミン,ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウム・リン・鉄など 13 種類の無機質について食事摂取基準が示されている.なお,エネルギーについては,参考として推定エネルギー必要量(EER)が,各栄養素A これまでの栄養摂取量算定の経過B 日本人の食事摂取基準(2015 年版)1628 章 日本人の食事摂取基準と食品の選択