ブックタイトル臨床現場で実践する薬学研究のススメ

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概要

臨床現場で実践する薬学研究のススメ

423 メタ分析を活用し問題点を解決する視点Linezolid versus vancomycin for meticillin-resistant Staphylococcus aureusinfection: a meta-analysis of randomised controlled trials3)研究の目的 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しては,長年の間バンコマイシン(VCM)がゴールド・スタンダードであったが,近年リネゾリド(LNZ)がMRSAに適応拡大された.LNZとVCMの有効性および安全性に注目したランダム化比較試験はいくつか発表されているが,それらの結果は必ずしも一致しないのが現状である.そこでAnらは,ランダム化比較試験により得られた結果について,メタ・アナリシスを行い,LNZとVCMのMRSAへの有効性および安全性についてより信頼できるエビデンスを確立できないかと考えた.方法 1)全年齢のMRSA感染患者を対象とした前向きランダム化比較試験,2)LNZとVCMの割り付けは無作為,3)治療効果,安全性の情報を含む,4)適切なサンプルサイズがある,といった選択基準やいくつかの除外基準を設け,各種データベースからlinezolid,methicillin-resistant Staphylococcus aureus,MRSA,vancomycinをキーワードに論文検索を実施した.用いたデータベースはPubMed,Cochrane CentralRegister of Controlled Trials,Embaseとした.選択した論文の結果を,臨床的治療効果,細菌学的治療効果,薬剤関連有害事象の項目に関してDerSimonian-Lairdの方法を用いたメタ・アナリシスにより統合した.DerSimonian-Laird法はオッズ比を統合するための代表的な方法の1つであり,各研究にそれぞれ定義した重みに基づき,各研究のオッズ比を統合し,統合オッズ比を得,その有意性を検定するものである.結果 図3に示す手順で,最終的に9報の研究報告がメタ・アナリシスの対象となった.図4に各研究の臨床的治療効果に関するオッズ比とそれらをまとめた統合オッズ比を示した.95 %信頼区間が1.0を含むStevens,Weigelt(1)などの研究では治療効果に差がないとする結果が得られている一方で,LNZの方が優れた治療効果を示す研究も見られている.これらの結果を統合すると,95 %信頼区間は,1.22 ~ 2.56とLNZ